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「袋は。なんで聞かないんだよ」新人の店員を責め立てた客。後ろで見かねた私が静かにかけた一言

夕方のレジに響いた怒声
仕事帰りに寄ったドラッグストア。
日用品をかごに入れてレジの列に並ぶと、前の四十代くらいの男性客が、応対する若い店員を睨みつけているのが目に入った。
夕方の時間帯で、開いているレジは一台きり。その一台の前に、客が数人連なっていた。
「遅いんだよ、もっと早くしろ」
店員の胸元の名札には、研修中の三文字。
まだ操作に慣れていないのか、レジ袋を広げる手が小刻みに震えていた。
「これ、ポイントつけたのか」
「袋は。なんで聞かないんだよ」
「はい、ただいま」
店員はそう答えるものの、焦れば焦るほど手元が狂う。
バーコードをうまく読み取れず、同じ商品を二度、三度とかざしていた。
「早くしろって言ってるのが聞こえないのか」
矢継ぎ早の追及に、店員はうつむいたまま謝るのが精一杯だった。
声が細くなるほど、男の口調は容赦なく強くなる。会計はいっこうに進まず、後ろに続いていた列が、ぴたりと止まった。
「こんな新人によく任せるよな。教育し直したほうがいいよ」
吐き捨てるような一言に、店内の空気が重く沈んだ。並んでいた誰もが目を伏せ、聞こえないふりをしている。
私も、口を挟むべきか迷いながら、足元のかごを見つめていた。関われば自分に矛先が向くかもしれない。そんな計算がよぎって、動けなかった。
私が静かにかけた一言
会計を終えても、男はまだ店員を睨んだままだった。
財布をしまいながら、「ほんと、ストレスたまるわ」と聞こえよがしにつぶやく。
店員は、そのたびに深く頭を下げていた。
やがて私の番が来た。まだ指先を震わせながら商品を通そうとする店員に、私はできるだけ穏やかに声をかけた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
店員が、はっと顔を上げた。
「急いでませんから、落ち着いていきましょう」
その声が届いたのか、レジを離れかけていた男の動きが、ふと止まった。決まり悪そうにこちらを一瞥し、それからすぐに目を逸らす。
何か言い返そうと口を開きかけて、けれど言葉は出てこなかった。
結局、彼は小さく肩をすくめると、逃げるように自動ドアの外へと消えていった。
張り詰めていた空気が、ゆっくりとほどけていく。
後ろに並んでいた女性客が、私に向けて小さくうなずいてくれた。
「……ありがとうございます」
店員が、消え入りそうな声で言った。見ると、その手はもう震えていなかった。
私は小さくうなずき返し、財布を取り出した。
焦らなくていい。誰だって最初は新人だ。そう伝えたかっただけだった。ゆっくりと通されていく商品のバーコードの音だけが、静かな店内に規則正しく響いていた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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