MENU

Share

HOME LIFESTYLE STORY COLUMN

「スーパーで3時に、見かけたよ」健康相談会に来る男性。だが、近すぎる距離に感じた本音

「スーパーで3時に、見かけたよ」健康相談会に来る男性。だが、近すぎる距離に感じた本音

相談会の常連さん

私は、ある自治体で働くパート職員です。

月に一度、市民の方に向けた健康相談の会を開いています。

その会に、必ず顔を出す男性がいます。

六十代の後半くらいでしょうか。

健康の話がとにかく好きで、職員に知識を披露するのを、何よりの楽しみにしている方です。

新聞の切り抜きを丁寧にまとめた分厚い資料を、毎回どっさり持ってこられます。

そして、こちらが頼んでもいないのに、受付にそっと積んでいくのです。

「職員のみなさんで共有しておいてね。返すのは来月でいいから」

断る間もありません。

市民の方ですから、無下にもできず、私たちはいつも笑顔で受け取っています。

名指しで呼ばれて

やっかいなのは、その次です。

会にいらっしゃると、気に入った職員をひとり、名前で呼びつけるのです。

「あの資料、ちゃんと目を通してくれた?どう思った?」

感想を求められて、私はいつも言葉を選びます。

当たり障りのない相づちで、その場をやり過ごすしかないのです。

ある日のことでした。会が終わりかけたころ、その方が、ふいにこう言ったのです。

「スーパーで3時に、見かけたよ」

返す言葉に詰まりました。

たしかにその日の午後三時ごろ、私は近所のスーパーにいました。けれど、そんな話を、この方にした覚えはないのです。

割り切れないまま

あとで同僚に聞くと、同じようなことを言われた人が、何人もいました。

「コンビニで何を買っていたね」と、買った物まで言い当てられた職員もいたのです。

いつ、どこで、私たちを見ているのか。その姿に気づいた人は、ひとりもいませんでした。

職員のあいだでは、少し困った方、という受け止めになっています。

悪い人ではありません。ただ、こちらの暮らしの中にまで、するりと入り込んでくるのです。

話しかけてくるときの、あの親しげな笑顔が、かえって胸に引っかかりました。

それでも、相手は大切な市民の方です。表立って距離を置くこともできず、私は今日も、当たり障りのない笑顔を返しています。

次の相談会でも、あの方はきっと資料を置き、私の名前を呼ぶのでしょう。そしてまた、私の知らないところで見た私の一日を、そっと口にするのかもしれません。

どう扱えばいいのか、答えは出ません。ただ薄い気味の悪さだけが、胸の底に、静かに残り続けています。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

ほかの小説も読む

CHARACTERS

登場人物から探す

THEME

テーマ・シチュエーションから探す

ENDING

結末から探す

最も人気の短編小説

もっと見る >

スカッとする短編小説

もっと見る >

モヤモヤ短編小説

もっと見る >

ゾッとする短編小説

もっと見る >

LINEの短編小説

もっと見る >

実体験をもとにした短編小説

もっと見る >

恋愛トラブル

もっと見る >

ハラスメント

もっと見る >

金銭トラブル

もっと見る >

浮気・不倫

もっと見る >

仕事のトラブル

もっと見る >
ふと心に引っかかった「モヤモヤ」
思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」

その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

応募フォームはこちら

PROFILE

GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

website
前の記事

「SNSを、特定されていたの」距離を取ったはずの男。だが、非常識な男の行動に絶句

GLAM Lifestyle Editorialのすべての記事を見る

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

特集記事

Ranking