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「電車の奥が空いてる、早く進んで」ホームでよろけた私。だが、振り返った時の光景に絶句
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降りる人が、終わらない
その日は残業で、帰りが遅くなった。ホームは混んでいて、乗車口の列は十人以上が縦につながっている。私は真ん中あたりだった。
「まもなく電車がまいります。白線の内側までお下がりください」
放送が流れても、到着まではまだ十分ほどあった。列の後ろに人が足されていく気配が、背中越しに伝わる。
やがて滑り込んできた電車は、想像していたよりずっと混んでいた。ドアが開いても、すぐには誰も出てこない。
「すみません、降ります」
奥から声が上がって、人の塊がほどけていく。
一人目が降り、二人目が降り、それでもまだ続いた。
列は動かない。
そのとき、背後で声がした。
「電車の奥が空いてる、早く進んで」
怒鳴り声ではなかった。
低く、抑揚のない、独り言のような話し方だった。
誰に向けたのかも分からない。私は前を向いたまま体を縮めた。まだ降りている人がいる。進みたくても、進む場所がなかった。
振り返った先の横顔
最後の一人がホームに出て、列がようやく1歩だけ前に動いた。前の人に続いて、右足をドアの縁に踏み出した。
その瞬間、背中の真ん中に重い力が入った。押された、という柔らかい感覚ではない。
体重をまるごと預けて突き飛ばすような、ひと突きだった。上半身だけが先に倒れて、足がついてこない。
足元に、ホームと車体のあいだの黒い隙間が見えた。
「あっ」
とっさに伸ばした手が、ドア横の手すりに触れた。
指をかけて、体を車内へ引き込む。膝が笑っていた。
そこで、ようやく振り返った。後ろに立っていたのは、年配の女性だった。
目は合わなかった。私が振り返ったことに、気づいてもいないようだった。
眉ひとつ動かさず、私の横をすり抜けて車内の奥へ歩いていく。
空いた座席の前で足を止め、荷物を膝に置いて静かに腰を下ろした。それから一度も、こちらを見なかった。
怒っている顔でも、急いでいる顔でもない。窓の外を眺めているだけの、どこにでもいる乗客の横顔だった。
さっき私の背中を突いた手が、膝の上で静かに組まれている。声をかける気は起きなかった。何を言えば通じるのか、見当もつかなかった。
私は吊り革につかまったまま、遠くからその人を見ていた。何を考えていたのかは、最後まで分からないままだった。数駅先で、その人は静かに席を立って降りていった。
後日、友人に話した。
「それ、駅員さんに言えばよかったのに」
「急いでたし、言っても仕方ないと思ったから」
あの夜から、列での立ち方が変わった。
混んだ時間帯のホームで足を踏み出す前に、必ず一度、後ろを確かめる。
誰も、何もしていない。それでも、後ろが気になる。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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