Share
妻「保険の更新だけはしてね」→「後でやるって」と後回しにする夫。だが、保険が失効した夫に突きつけた現実とは

「後でやる」の口癖
夫の口癖は、昔から決まっていた。
「後でやるって。大丈夫、大丈夫」
頼んだことを、その場ですぐ片付けた試しがない。今回もそうだった。私は何度も念を押していた。
「今月中に、自動車保険の更新だけはしてね」
「わかってるよ。まだ日にちあるから」
契約者本人でないと手続きできない部分があり、私には代われない。だから夫を信じて任せるしかなかった。けれど、月末が近づいても夫は動かない。
「ねえ、保険。本当に大丈夫なの?」
「平気平気。そんな急かさなくても間に合うって」
笑って取り合わない夫に、嫌な予感が拭えなかった。
届いた失効通知
その予感は、最悪の形で当たった。
更新期限を過ぎた数日後、保険会社から一通の通知が届いたのだ。「ご契約は失効しています」。はっきりと、そう記されていた。
「これ見て。失効してるって。あれだけ言ったよね」
私が通知書を差し出すと、夫はちらりと見ただけで肩をすくめた。
「そんなに怒ること?」
「数日くらい平気でしょ」
悪びれる様子は、まるでなかった。私が言葉を失っていると、夫は車の鍵を手に取り、こう言ったのだ。
「ちょっと買い物行ってくるわ」
その背中に、私は思わず声を張った。玄関で靴を履きかけていた夫の腕を、とっさにつかむ。
「待って。今、うちの車は無保険状態だよ。絶対に運転しないで」
「大げさだなあ。ちょっとそこまでだぞ」
「だから何度も言ったよね。もし事故を起こしたら、保険は一円も出ない。相手への賠償も、修理代も、全部うちが自腹で払うことになる」
その一言で、夫の手が止まった。鍵を握ったまま、顔色がすっと変わっていく。
「……本当にまずいかも」
ようやく事の重さに気づいたらしい。さっきまでの余裕は、きれいに消えていた。
青ざめて電話する夫
夫はその場で鍵を放り出し、慌てて保険会社に電話をかけ始めた。
「すみません、契約が失効してしまって……はい、本当に申し訳ありません」
電話口で、平謝りを繰り返している。「数日くらい平気」と言い放った人とは思えない狼狽ぶりだった。幸い、その日のうちに再契約は済んだ。事故が起きていなかったのは、本当に運がよかっただけだ。
後日、夫はぽつりと言った。
「俺が、甘く考えてた。ごめん」
それから夫は、期限のある手続きをスマホのリマインダーに登録するようになった。今では私が言わなくても、自分から先に片付けてくる。
「保険、来月更新だから。もう手続きしといたよ」
得意げに報告してくる夫に、私は思わず笑ってしまった。「後でやる」が口癖だった人が、今では誰より期限に厳しい。立場は、いつのまにか入れ替わっていた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


