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「握り寿司を5人前、並でお願いします」20年続いた義父の注文が、私のいない年だけ豪華になった理由

「握り寿司を5人前、並でお願いします」20年続いた義父の注文が、私のいない年だけ豪華になった理由
毎年同じ、義父の電話
妻の実家に帰省すると、初日の夕飯は決まって寿司の出前でした。
もう20年、変わらない我が家の恒例です。
注文するのは、いつも義父の役目でした。
義父は居間の電話を取り、こちらにも聞こえる声で、はっきりと告げます。
「握り寿司を5人前、並でお願いします」
毎年、一言一句、同じでした。
5人前の中には、婿である私も、ちゃんと数えられています。
それは嬉しいのですが、正直に言えば、少し不思議でもありました。
わざわざ毎回、私に聞こえるように「並で」と言わなくてもいいのにな。
そう思いながら、20年、聞き流してきたのです。
私のいない年の食卓
ある夏、仕事の都合で、私だけ帰省できない年がありました。妻と子どもたちが先に、義父母のもとへ向かいます。
その晩、妻から一枚の写真が届きました。
食卓に並んでいたのは、いつもの握りではありません。
つやつやのウニ、こぼれそうなイクラ、頭つきの立派なエビ。
どう見ても「並」ではない、豪華な寿司ばかりでした。
私がいない年だけ、ごちそうになっている。
一瞬、ほんの少しだけ、胸の隅がちくりとしました。
「なんで今年だけ、こんなに豪華なの」
電話でそう尋ねると、妻は受話器の向こうで笑い出しました。
20年ぶんの種明かし
「お父さんね、あなたが来る年はいつも、並で十分だって張り切ってたのよ」
妻の話は、こうでした。
義父は、婿である私に気を遣わせたくなかったのだそうです。
豪華な寿司を出せば、私が恐縮してしまう。
だから毎年わざと、私に聞こえるように「並で」と注文していた。
うちは気取らない家だから、あなたも構えなくていい。
そういう意味の「並」だったのです。
私のいない年は、その気遣いがいりません。
だから義父は、遠慮なく自分の好きなウニやイクラを頼んだ。ただ、それだけの話でした。
不器用な人だな、と思いました。
20年ものあいだ、あの「並で」は、ずっと私に向けられた優しさだったのです。
次に帰省したとき、私は義父に言いました。
今年は僕も、ウニが食べたいです、と。
義父はぽかんとして、それから、少し照れたように笑いました。
その年の注文だけ、ほんの少しだけ豪華だったことは、言うまでもありません。
その日の食卓はいつもより賑やかで、義父もまんざらでもなさそうでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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