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「人見知りなんだと思うよ」挨拶もしなかった隣の奥さん。だが、初めて言葉を交わせた理由とは

「人見知りなんだと思うよ」挨拶もしなかった隣の奥さん。だが、初めて言葉を交わせた理由とは
越してきた家族と、朝の会釈
隣の家に若い家族が越してきたのは、四年ほど前の春でした。
引っ越しの挨拶に来てくれたのはご主人のほうで、タオルの箱を抱えていました。
「子供もいて音が出るかもしれません。すみません」
穏やかな方でした。奥さんはその後ろに半歩下がったまま、こちらを見ませんでした。
会釈だけして、先に家へ入っていきます。
それきり、奥さんと言葉を交わしたことはありません。
ごみ捨て場で会っても、目が合いそうになると視線が下がります。スーパーの通路で見かけた日は、かごを持ったまま別の棚のほうへ曲がっていきました。
「人見知りなんだと思うよ」
夫はそう言って、それ以上は何も言いませんでした。私もそう思うことにして、四年が過ぎました。
子供との挨拶が始まる
代わりに、隣の男の子がよく声をかけてくれます。
四歳くらいでしょうか。
「ヤッホー」
うちの玄関が開く音がすると、庭を走ってきてフェンス越しに手を振ります。
はじめは私も嬉しくて、そのたびに手を振り返していました。
「ヤッホー」
返すと、また返ってきます。
十回、二十回と続いて、先に切り上げるのがどうしても申し訳なくなりました。
「玄関が開くと、いつもヤッホーが始まる」
夫が笑いながら言いました。
笑いごとのつもりだったと思います。けれど私は、息子が外で遊びたいと言っても、すぐにいいよと言えなくなっていました。
手を挙げた人
その日も、庭に出た息子の後ろで、私はドアの取っ手を握ったままでいました。
「ヤッホー」
「あのね、きょうは、なわとびもってきた」
フェンスの向こうから、縄を持った手が突き出されました。
返事をしようとしたとき、隣の玄関の網戸が開く音がしました。
「すみません、いつもうるさくして」
奥さんの声を聞いたのは、越してきてから初めてでした。
「うるさいなんて。うちも、返すのが楽しくて」
「ずっと、挨拶できてなくて。言おうと思うたびに、いまさら遅いなと思ってしまって」
奥さんは言いながら、自分の指先のあたりを見ていました。
「私も、声をかけそびれていました。おあいこですね」
「ママ、ヤッホーは」
男の子がフェンスをつかんで、下から奥さんを見上げました。
奥さんは少し笑って、小さく手を挙げました。
「ヤッホー」
それから、玄関が開く音がしても、私は身構えなくなりました。返す声が、二つになったからです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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