Share
「先に取っちゃえばいいよ」朝食バイキングで割り込みする客。だが、他の客の正論で状況が一変

朝食会場の行列で
夏の休みに、家族そろって山あいの温泉旅館へ一泊しました。
日ごろの忙しさを忘れ、みんなでのんびり過ごす、ささやかなごほうびの旅でした。
朝、楽しみにしていた朝食バイキングの会場へ向かうと、入り口にはもう列ができていました。
私たちの前には、五組ほどの宿泊客が静かに順番を待っています。
みんな、湯上がりのゆったりとした表情で、行儀よく順番を守って並んでいます。
私も家族と小声で今日の予定を話しながら、自分たちの番が来るのをのんびりと待っていました。
ところが、あとから来た家族連れが、その列の様子など目に入らないという風に、するりと前のほうへ入り込んだのです。
聞こえないふり
後ろに並んでいた男性が、遠慮がちに声をかけました。
「みんな、並んでるんですけど」
けれど、その家族はまるで聞こえないかのように、そちらを見ようともしません。
それどころか、連れの一人がこう言い放ちました。
「先に取っちゃえばいいよ」
そう言うなり、さも当然のように、大皿の料理へ次々と手を伸ばし始めます。
近くにいたスタッフもその場ではとくに注意をせず、周りで待つ人たちも、気まずそうに黙って見ているほかありませんでした。
順番を守って待っていた側が、なぜか損をしている。そんな理不尽さに、列全体が重たい空気に包まれていきました。
後ろの客の一言
その時でした。列のなかほどで待っていた年配の男性が、見かねたように一歩前へ出たのです。
その光景を、もう見過ごせなかったのでしょう。
声を荒らげるでもなく、けれどはっきりとした口調で、その家族へ告げました。
「みなさん並んでいますよ。最後尾はあちらです」
凛とした一言に、会場の空気がふっと変わりました。割り込んだ家族は、ばつが悪そうに顔を見合わせています。
やがて、一人また一人と、ばらばらに列の最後尾へと歩いていきました。
あれほど重く気まずかった行列の空気が、その背中を見送るうちに、すっと晴れていくのが分かりました。
誰かが怒鳴ったわけでも、責め立てたわけでもありません。
並んでいる人たちのために、まっすぐな言葉が一つあっただけ。私は温かい気持ちで、その背中を見送りました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


