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「これ、あの子に渡してくれるか」祖母から預かったご祝儀袋。だが、その場で開けた従妹の一言に絶句

祖母が袱紗ごと渡してきた朝
従妹の結婚式の三日前、祖母の家に寄りました。
祖母は膝を痛めていて、階段の多い式場までは行けません。
「これ、あの子に渡してくれるか」
座卓の上に、袱紗に包まれた祝儀袋が置いてありました。
表書きの字が、いつもより大きく書かれています。
「筆ペンが細うてな。三回書き直したわ」
「ちゃんと渡すよ。写真もいっぱい撮ってくるし」
祖母は袋の端を指でそろえてから、私の手に載せました。
中身は聞いていません。聞く必要もない包みでした。
控室で、袋の封が開いた
当日、式場の親族控室で従妹をつかまえました。
叔母や親戚が七、八人、同じ部屋でお茶を飲んでいます。
「おばあちゃんから。膝が痛くて来られへんて、すごい謝ってた」
「ありがとう。……あ、ちょっと待って」
従妹はその場で袱紗を開き、封をはがして、中の紙幣を指で数えはじめました。
部屋の話し声が止まります。
「10万円やわ、あんたはなんぼもろた」
「え」
「あんたが式挙げたときや。もっと多かったんちゃうん」
祖母が三回書き直したという表書きが、開いた封の陰になっていました。
「うちのぶんは、聞かんといて」
それだけ言って、袱紗をたたんで従妹の手に返しました。
従妹の指が止まりました。
数えかけの紙幣をそろえ直し、袋に戻します。
何か言いかけて、そのまま口を閉じました。
「…そうやんな。ごめん」
隣にいた叔母が、湯呑みを置いて言いました。
「おばあちゃん、昨日から袋のこと気にしてはったよ。うちにも何回も電話くれてな」
従妹は袋を鞄の奥にしまい、壁のほうを向いたまま座り直しました。
控室の話し声が、少しずつ戻ってきます。
帰り道に決めたこと
披露宴では、いつもどおり笑って写真に入りました。
祖母に見せるぶんを、多めに撮っています。
帰りの電車で、私は連絡先の画面を開きました。
消しはしません。ただ、こちらから開くのをやめると決めました。
その足で祖母の家に寄りました。
「あの子、喜んどったか」
「うん。袋、大事にしまってたよ」
「そうか。ほんならええわ」
祖母は写真を一枚ずつ、指でなぞるように見ていました。
10万円がどういうお金だったのか、この人がいちばんよく知っています。
あれから式の話は、私からはしていません。
従妹からの連絡もありません。祖母の家に行くと、あの日の写真が仏壇の横に立ててあります。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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