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「奥さんは来てないの?」夫の何気ない質問。だが、質問1つでその場の空気が悪くなったワケ

座敷に足りないひとり
夫の実家の正月は、いとこの家族まで集まって十数人になります。
その年も座卓を二つつなげて、朝から煮しめの大皿が座敷を行き来していました。
座布団を配りながら、私は数を二度かぞえ直しました。いとこのひと組が、ご主人と子ども3人だけで来ています。
毎年その隣に座っていた奥さんの姿が、どこにも見当たりません。
「こちらの席、空いてますよ」
「ああ、ここでええわ」
いとこはそう言って、子どもたちを自分の周りへ座らせました。上の子が下の子の取り皿を運び、慣れた手つきで箸を並べていきます。
台所へ戻ると、義母が黙って重箱の蓋を開けていました。
聞いてはいけない気がして、私も口をつぐんだまま盛り付けを手伝います。
お菓子の袋が回った昼
昼を過ぎ、子どもたちにお菓子の袋が回されました。
夫は座卓の端で、いとこのほうへ体を向けます。
「奥さんは来てないの?」
悪気のない声でした。ただ、部屋の端まで届く大きさでした。
座敷から話し声が消えました。義母が急須を持ったまま止まり、伯母が湯呑みを静かに置きます。
子どもたちはお菓子の袋を開けずに、膝の上へ乗せていました。
「……ああ、うん」
いとこはそれだけ言って、コップに口をつけました。誰も次の話題を出せません。
「みかん、剥こか」
義母の声で、ようやく座敷の音が戻りました。夫は自分が何をしたのか分からない顔で、私のほうを見ています。
私も、首を小さく横に振ることしかできませんでした。
親戚が帰ったあとの台所
夕方、いとこの家族が帰り、玄関の戸が閉まりました。重箱を洗いながら、夫が義母に聞きます。
「なあ、あの子らのお母さんは」
「去年の秋に、別れはったんよ」
義母は台ふきんを絞る手を止めませんでした。
「ほんまに知らんかったんか」
「聞いてない」
「そうか。言うたつもりでおったわ」
それきり、その話は終わりました。夫は座敷へ戻り、何も言わずにテレビを消します。
誰かが悪かったわけではありません。
夫は知らなかっただけで、義母は伝えたつもりでいただけです。それでも、あの静けさのなかで膝にお菓子を乗せていた子どもたちの背中が、片づけのあいだもずっと目に残っていました。
「先に教えてほしかったな」
「……そやな」
夫はそれだけ言って、洗い終えた重箱を棚の上へ戻しました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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