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「教育がなってないんじゃないのか」閉店前のお店で怒鳴る客。だが、店長が静かに告げた一言とは

閉店30分前に来た男性客
学生のころ、幹線道路沿いにあるコンビニで夜のアルバイトをしていました。
二十四時間営業ではなく、日付が変わる前に閉店する店です。
その日は閉店まで、あと30分ほどでした。
客足はすっかり途絶え、店内にいるのは雑誌コーナーで立ち読みをしている常連客だけです。
レジ周りを片づけていると、自動ドアが開きました。
入ってきたのは、四十代くらいの男性です。
男性はまっすぐ飲料コーナーへ向かい、缶ビールのケースをレジ台に置きました。
「もう一箱あるから、待ってて」
再び売り場へ戻り、もう一ケースを抱えてきます。
「ありがとうございます。お会計いたします」
男性は現金を出し、受け取ったおつりを財布にしまいました。
ここまでは、ごく普通のお客さんでした。
ところが、私が商品に持ち手をつけようとすると、男性が顎で駐車場の方向を示したのです。
「これ、車まで運んでくれない?」

「客が頼んでるんだよ」
男性の車があるという駐車場は、店の裏手でした。
当時、店内にいる従業員は私と、バックヤードで作業をしている店長の二人だけです。
私が駐車場まで商品を運べば、その間、レジ周辺を無人にしてしまいます。
「申し訳ありません。勤務中に店の外へ出ることはできない決まりなんです」
そう伝えた瞬間、男性の表情が変わりました。
「はあ?たったそこまでだろ」
「申し訳ありません」
「2ケースもあるんだぞ。バイトのくせに、それくらい運べよ」

怒鳴り声が、静かな店内に響きました。
雑誌コーナーにいた常連客も、驚いたようにこちらを振り返っています。
「客が頼んでるんだよ。何のためにそこに立ってるんだ」
何か言わなければと思っても、声が出ませんでした。
レジ台の縁を握ったまま、指先だけが小さく震えます。
私はカウンターの下へ手を伸ばし、バックヤードの呼び出しボタンを押しました。
店長が静かに告げたこと
すぐに扉が開き、店長がレジへ出てきました。
「お待たせいたしました」
男性は店長を見るなり、私を指さしました。
「この店員、車まで運んでくれないんだよ。教育がなってないんじゃないのか」
店長は私を見ることなく、落ち着いた声で答えました。
「店員が店外へ出られないという説明は、当店の決まりに沿ったものです」
「でも、俺は客だぞ」
「お買い上げいただいたことには感謝しております。しかし、従業員への暴言はおやめください」
男性が口を開きかけましたが、店長は声を荒らげることなく続けました。
「商品を運ぶための台車でしたら、お貸しできます」

店長はバックヤードから小さな台車を出し、レジの横に置きました。
「こちらをお使いください。駐車場から戻られましたら、入口の脇へ置いていただければ結構です」
男性は台車と店長の顔を交互に見ました。
店内には、台車の車輪がわずかに揺れる音だけが聞こえています。
「……最初から、そう言えばいいだろ」
男性は小さくつぶやくと、ビールのケースを一箱ずつ台車に載せました。
そのまま自動ドアを抜け、駐車場へ向かっていきます。
しばらくして、入口の脇に台車だけが戻されました。
「断ったのは正しい判断だよ」
男性が帰ったあと、私は店長に頭を下げました。

「すみません。お手数をかけました」
店長は首を横に振りました。
「謝らなくていいよ。店の外に出られないと断ったのは、正しい判断だから」
「でも、お客さんを怒らせてしまって…」
「お願いを断ることと、失礼な対応をすることは違うよ」
店長はそう言うと、何事もなかったようにバックヤードへ戻っていきました。
男性の怒鳴り声は、今でも耳に残っています。
それでもあの夜、店長が当然のこととして私を守ってくれた姿も、同じくらい忘れられません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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