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「みんなの分、ここで取っちゃうね」家族全員分を一度に取って残していった客。だが、スタッフが案内した結果

「みんなの分、ここで取っちゃうね」家族全員分を一度に取って残していった客。だが、スタッフが案内した結果
朝食の列に、横から手が伸びた
旅行先のホテルで迎えた朝でした。
会場に入ると、温かい料理が並んだカウンターの前にはすでに列ができていました。
私も皿を手に取り、最後尾について順番を待つことにしました。
列はゆっくりとですが確実に進んでいきます。
誰も急かさず、取り終えた人から静かに前へ抜けていく。旅先の朝らしい流れでした。
その流れが、ふっと途切れました。
列の横から、するりと人が入ってきたのです。
「みんなの分、ここで取っちゃうね」
連れらしい相手を振り返って、その人は当たり前のようにそう言いました。
トングを手に取ると、大皿の料理を次々と自分のトレーへ移していきます。
自分の分だけとは、とても思えない量でした。
取り分けは、なかなか終わりませんでした。
列の先頭にいた人は、皿を持ったまま立ち尽くしています。
後ろに並ぶ人たちも、黙って待つしかありません。誰も声を上げないぶん、食器の触れ合う音だけが妙に大きく聞こえました。
「…まだかかりそうですね」
前に並んでいた人が、困ったように小さくつぶやきました。私は曖昧にうなずくことしかできませんでした。
会場全体に向けられた、穏やかな案内
ようやく列が動き出したころ、その人は山盛りのトレーを抱えて席へ戻っていきました。
それからしばらくして、席のあたりから小さな驚きの声が上がりました。
「あれ、そのまま残ってる…」
目をやると、テーブルの上には手のつけられていない料理が並んだままになっていました。
そのときでした。スタッフがカウンターの脇に歩み出て、トングの位置を直しながら、会場全体に届く落ち着いた声で話し始めたのです。
「お料理はこのあとも随時お出ししてまいりますので、どうぞお慌てなくお取りください」
「恐れ入りますが、お取りになる際は、列の最後尾からお願いいたします」
誰かを名指しするでもなく、咎める調子でもありません。
ただ静かに、その場にいる全員へ向けた案内でした。それでも声が届いた瞬間、張りつめかけていた空気がすっとほどけたのがわかりました。
やがて、先ほどの人がおかわりに立ちました。
今度はカウンターの横へは向かわず、少し伏し目がちに列の最後尾へ並びます。
誰も何も言いませんでしたが、その姿を見て、周りの人たちの表情がやわらぎました。
列は、また元の速さで動き始めました。私も落ち着いて料理を選び、温かいうちに席へ運ぶことができました。
開放的になる旅先だからこそ、周りへの心配りが朝を穏やかにしてくれるのだと感じました。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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