MENU

Share

HOME LIFESTYLE STORY COLUMN

「お前の名前を出せ、クビにしてやる」列を無視し店員に暴言を吐いた客。だが、防犯カメラに一部始終が映っていた結果

「お前の名前を出せ、クビにしてやる」列を無視し店員に暴言を吐いた客。だが、防犯カメラに一部始終が映っていた結果

列を無視して来た客

コンビニで働きはじめて三年、レジは床のシールに沿って一列に並ぶ決まりだった。

夕方の店内は仕事帰りのお客さんで、五、六人の列ができていた。

その日、最近この街へ引っ越してきたらしい五十代の男性が、並ぶ人の脇をすり抜けて、まっすぐ私のレジに弁当を置いた。

会計を待つ列には目もくれず、当たり前のように前へ出てくる。

「あちらの位置でお待ちください。空き次第お呼びしますので」

できるだけ穏やかに、列の後ろを手で示した。並んでいたお客さんたちも、当然という顔でこちらを見ている。

「並んでたじゃねーか」

声が一気に跳ね上がる。列にいた人たちが、いっせいにこちらを振り向いた。

「先ほどから、後ろのお客様が順番にお待ちです。恐れ入りますが」

「うるせえ、俺が先だ」

男性はカウンターに身を乗り出し、私の顔を指さした。周りの空気が、ぴりっと張りつめる。

「てめー、名前教えろ」

防犯カメラの前で

私は胸の名札を、指で軽く押さえて見せた。名字は、ここにはっきり書いてある。

「お前の名前を出せ、クビにしてやる」

「はい、こちらが名前です。ご報告いただいて構いません」

やましいことは何もしていない。天井の防犯カメラも、今のやり取りをすべて映している。

声が震えなかったのは、自分は悪くないと分かっていたからだ。

その一言で、男性の顔がぐっと固まった。言い返す言葉を探すように口が動き、けれど続かない。

目が、忙しなく左右に泳いだ。あれほど威勢のよかった声も、急にしぼんでいく。

「……ふざけやがって」

男性は手に取った商品を私と売り場に投げつけ、荒々しく店を出て行った。

おにぎりやペットボトルが、床の上に散らばる。

ガラス越しに、外で誰かへ電話をかけている姿が見えた。

お客様窓口とかにでも、私をクビにさせろとでも訴えているのだろう。

列にいたお客さんが、そっと「大変だったね」と声をかけてくれた。

だが数日後、その電話を受けて店に来た上の人は、私からも話を聞き、防犯カメラの記録を最初から最後まで確かめていた。

「非があるのはお客様のほうですね。よく落ち着いて対応されました」

私はクビにならなかった。

そして怒鳴りつけたあの男性のほうが、この店への出入りを禁止された。

レジに立つと、床のシールの上にきちんと一列。

今日も、いつもの朝が続いている。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

ほかの小説も読む

CHARACTERS

登場人物から探す

THEME

テーマ・シチュエーションから探す

ENDING

結末から探す

最も人気の短編小説

もっと見る >

スカッとする短編小説

もっと見る >

モヤモヤ短編小説

もっと見る >

ゾッとする短編小説

もっと見る >

LINEの短編小説

もっと見る >

実体験をもとにした短編小説

もっと見る >

恋愛トラブル

もっと見る >

ハラスメント

もっと見る >

金銭トラブル

もっと見る >

浮気・不倫

もっと見る >

仕事のトラブル

もっと見る >
ふと心に引っかかった「モヤモヤ」
思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」

その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

応募フォームはこちら

PROFILE

GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

website
前の記事

「6個全部もらうわ。早い者勝ちでしょ」焼きたてのパンを全部持ってた客。だが、スタッフの一言で状況が一変

GLAM Lifestyle Editorialのすべての記事を見る

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

特集記事

Ranking