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「どんどん投げろ!絶対負けんなよ!」子どもたちの玉入れの最中に響いた声。だが、場内の放送が状況を変えた瞬間

玉入れの合図と同時に、隣から声が飛んできた
秋晴れの校庭に、赤と白の運動帽が入り混じっていた。低学年の玉入れが始まった。
私も自分の子の帽子を目で追いながら、手を叩いていた。
その拍手をかき消すように、すぐ隣に座っていた父親が声を張り上げた。
「どんどん投げろ!絶対負けんなよ!」
「相手弱いんだから!」
競技をしているのは、体操服の裾がはみ出したままの小さな子どもたちだ。
楽しくやっている運動会で、どうしてそんな汚い言葉を使うのだろうと思った。
前の列の家族が、ちらりと振り返った。
斜め後ろのお母さんたちも、目だけでこちらを見て、また前に向き直る。
誰もが明らかに迷惑そうにしているのに、当の本人はまったく気にしていない様子だった。
私は膝の上で手を組んだまま、何も言えなかった。
ひとこと注意して逆ギレされたら、と考えると怖かった。子どもの晴れの舞台で、揉め事の当事者にはなりたくない。周りの人たちも、たぶん同じことを考えていた。
放送席から流れた、名指しをしない一言
玉入れが後半に入り、かごの下で子どもたちが玉を拾い直している。そのとき、校庭のスピーカーが小さく鳴った。
「保護者のみなさまにお願いします」
進行を担当していた先生の声だった。少し緊張しているのが、こちらにも伝わってきた。
「応援の声は少し小さめにお願いします、応援の時はがんばれーでお願いします」
誰の名前も出さなかった。叱る調子でもなかった。競技を進めるために必要なことを、会場全体へ丁寧に伝えただけだった。
隣の父親は口を開けたまま少し黙り、それから何も言わずに腰を下ろした。あれだけ響いていた声が、ぱたりと消えた。
入れ替わるように、保護者席のあちこちから拍手が起きた。誰かが手を叩けば、それが波のように広がっていく。赤組の親も白組の親も、同じ音で自分の子を送り出していた。
かごの下では、子どもたちが玉を抱え直していた。投げそこねた子が笑い、隣の子がしゃがんで拾って渡す。私の子も、口を大きく開けて何か言いながら腕を振り上げていた。
「はいったー」
「まだあるよ、こっち」
玉入れは、ようやく子どもたちのものに戻った。私は、言えなかった自分を少し情けなく思いながら、それでも心の底から手を叩いていた。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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