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「夕飯は買ってくるから、休んでて」高熱で寝込む私。だが、帰ってきた夫の姿に絶句

レジ袋から出てきたのは一つだけ
共働きの我が家で、私が風邪で寝込んだ日のこと。朝から熱が三十八度を超え、体を起こすのもやっとだった。
「夕飯は買ってくるから、休んでて」
夫のその一言が、ありがたかった。
温かいものなら、おかゆでもうどんでもいい。そう思いながら、布団の中で夫の帰りを待った。
玄関のドアが開く音。レジ袋がかさりと鳴って、リビングのほうから香ばしい匂いが流れてきた。肉の焼ける、濃いソースの匂いだ。
熱でかすむ目をこすり、ふらつく足で台所へ向かった。テーブルの上には黒い容器の弁当が一つ。分厚いステーキがつやつやと光っていた。
一つ、だけ。
「……私の分は?」
夫は箸を割りながら、きょとんとした顔で私を見上げた。
「君は食欲ないと思って、弁当は一つ」
ラベルには3千円と印字されている。自分だけ3千円の高級ステーキ弁当を買って、寝込んでいる妻にはゼリー一つ買ってこない。それを気遣いだと思っている。
「だって熱あるでしょ。食べられないよね?」
「…聞いてくれたら、答えられたけど」
「そっか」
夫はそれだけ言って、また肉を口に運んだ。おいしそうに咀嚼する音が、やけに大きく聞こえた。私は水だけ飲んで、布団に戻った。
翌日から、私は何もしなかった
次の朝、熱は下がっていた。
下がったが、私の中の何かも一緒に冷え切っていた。
その日から、夫の分の家事を全部止めた。
弁当は作らない。シャツにアイロンはかけない。食器は洗わない。自分の分だけを、いつも通りきっちり片づけた。
初日、夫は気づかなかった。二日目、シンクに自分の皿だけが溜まっているのを見て、首をかしげた。
「なあ、俺の皿、なんで残ってんの?」
「私の分は洗いましたよ」
三日目の朝、洗濯カゴの底からしわしわのシャツを引っ張り出した夫が、ようやく顔色を変えた。
「あの、怒ってる…?」
「食欲ないと思ったので、聞かずに決めました」
夫の口が半開きのまま止まった。言いかけて、飲み込んで、また言いかけて、結局何も出てこない。
台所には、蛇口の水音だけが響いていた。
四日目の夜。夫は弁当を二つ提げて帰ってきた。3千円のステーキではなく、二人分で3千円に収まる、普通の弁当だった。テーブルに並べて、夫は深く頭を下げた。
「あの日、本当に悪かった。聞けばよかった」
「一人で決めないでください。それだけです」
私は下手に出なかった。夫はしばらく顔を上げられずにいた。
それ以来、夫は必ず先に聞くようになった。「今日、食べられそう?」「量はどれくらい?」。買い物の前にはメッセージまで届く。あの夜の3千円は、我が家で一番高い授業料になった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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