Share
「醤油は期限切れ、捨てといたわよ」留守中に合鍵で入り込む義母。だが、夫の一言で状況が一変

「醤油は期限切れ、捨てといたわよ」留守中に合鍵で入り込む義母。だが、夫の一言で状況が一変
クッションの位置がずれている
共働きの我が家に、平日の昼間、人はいない。帰宅したときの部屋は、朝出たときのままのはずだった。
最初に気づいたのはクッションだ。右端に寄せて出たはずが、真ん中へきれいに並べ直されている。
「ねえ、朝、ソファ触った?」
「触ってないけど」
夫はテレビから目も離さずに答えた。気のせいだと思うことにした。
けれど翌週は、キッチンだった。
醤油と酢の位置が入れ替わり、油の瓶がラベルをこちらへ向けて立っている。
玄関の鍵はかかっていた。財布の中身も、指輪も、何ひとつなくなっていない。泥棒なら、こんな几帳面な真似はしない。
(じゃあ、誰が入ったの)
電話口で明かされた正体
答えが出たのは、数日後の義母の電話だった。
孫の話、近所の話。その途中で、義母は思い出したように言った。
「醤油は期限切れ、捨てといたわよ」
マグカップを、危うく落としそうになった。
「……あの、それ、キッチンの引き出しの奥にあったものですか」
「そうそう。奥に押し込んであったでしょう。ああいうのは、早く捨てなきゃ」
義母の声は、いいことをしたと信じきった、明るい声だった。
「寝室のクローゼットも散らかっていたから、使いやすいように畳み直しておいたからね」
背中を、冷たいものが走った。引き出しの奥。クローゼットの中。ずれていたクッション。全部が一本につながった。この人は、誰もいない昼間に、この家へ上がり込んでいる。
玄関で差し出した手のひら
電話を切って、すぐに夫を呼んだ。
夫は青い顔で「合鍵、渡したのは……何かあったときのためで」と口ごもった。
「その何かが、今なんだけど」
夫は言い返さなかった。
週末、義母が来たとき、私は玄関先で手のひらを差し出した。
「お義母さん。合鍵を、返していただけますか」
義母の笑顔が、ぴたりと止まった。
「……何よ、それ。人の親切を、そんなふうに言うの」
「留守の家に上がって、寝室の引き出しまで開けるのは、親切とは呼びません」
言葉を探すように口が動いて、そのまま閉じた。義母は助けを求めるように夫を見た。夫は、母親の目を見返して言った。
「母さん。俺が渡した鍵だ。俺が返してもらう」
義母がバッグの底から鍵を取り出すまで、ずいぶん長い時間がかかった。私の手のひらに落ちたそれは、まだ生温かかった。
翌日、業者を呼んで、玄関の鍵そのものを電子キーに換えた。開けられるのは、暗証番号を知っている私と夫だけだ。
それから義母は、来る前に必ず電話を寄こすようになった。ドアの前でインターホンを押し、私が出るのを待っている。
「今日は、上がってもいいかしら」と聞くその声を、私はドア越しに、ゆっくり聞いている。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


