Share
「あのとき言えばよかった」隣人との水回りトラブル。だが、数年後に声をかけた結果

排水口は、うちのベランダにひとつだけ
マンションのベランダには、うちの側にだけ排水口があります。
お隣のベランダから出た水も、仕切り板の下を通ってこちらへ流れてくる造りです。
そのため、排水口の周りにたまった落ち葉や砂を片づけるのは、自然と私の役目になっていました。特に不満はなく、そういうものだと思っていました。
ある日、掃除を少しさぼってしまい、排水口が落ち葉でふさがってしまったことがあります。
気づいたのは、お隣の奥様でした。
「すみません、お水がたまってるみたいなんですけど…」
仕切り板の向こうから声をかけられ、私は慌ててベランダへ出ました。見ると、排水口の周りには濡れた落ち葉と砂がびっしり張りついています。
「ごめんなさい。こっちが詰まってました」
私がしゃがんで取り除いていると、お隣からもほうきの音が聞こえてきました。
「うちの水も流れていくから、こっちも掃いておくわね」
ありがたいなと思った、そのときです。
仕切り板の下から見える水の流れが、排水口とは反対の方向へ動いていることに気づきました。どうやら奥様は、水をこちらへ流すのではなく、ご自分のベランダの端へ向かって掃いているようでした。
「あれ…?」
一瞬迷いましたが、せっかく手伝ってくださっているのに「逆ですよ」とは言えません。その日は結局、何も言わないまま掃除を終えました。
一度言えないと、ますます言いにくくなった
それからも、ときどき隣から掃除をする音が聞こえてきました。
そのたびに「あのとき言えばよかった」と思うのですが、一度黙ってしまったせいで、今さら指摘するのも変な気がします。
そんな状態のまま、何年か過ぎました。
ある晴れた朝、またお隣からほうきの音が聞こえてきました。私は少し迷ったあと、思い切ってベランダへ出ました。
「あの、もしかして水、反対側に掃いてませんか?」
しばらく返事がありません。
やがて、仕切り板の向こうから戸惑った声がしました。
「え?反対?」
「排水口、こっちにあるんです。だから、こっちへ流してもらったほうが……」
すると少し間があって、「あっ!」という声が聞こえました。
「じゃあ私、ずっと排水口から遠ざけてたの?」
思わず私も笑ってしまいました。
「たぶん…そうだったみたいです」
「やだ、もっと早く言ってくれればよかったのに」
そう言われて、「私も言おうとは思ってたんですけど」と返すと、二人でまた笑いました。
その日から、奥様は水をこちらへ向けて掃いてくれるようになりました。
何年も気にしていたことなのに、伝えてみればほんの数分の話でした。それからはベランダで顔を合わせると、掃除のことだけでなく、天気や季節の話も少しするようになりました。
言いにくいと思って抱えていたことほど、案外、普通に伝えたほうが相手も気楽なのかもしれません。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


