Share
「2万円しか包んでないよね、あなた」法事のあとの食卓で金額を持ち出した叔母。だが、私の一言で黙り込んだ

「2万円しか包んでないよね、あなた」法事のあとの食卓で金額を持ち出した叔母。だが、私の一言で黙り込んだ
和やかな食卓で、叔母が急に金額の話を始めた
三年前、実家に親戚が集まった日のことだ。
法事を終えて、みんなで座卓を囲んで食事をしていた。
誰の子がいくつになっただの、近所の道が新しくなっただの、他愛のない話が続いている。
母が煮物の鉢を運び、いとこがビールの栓を抜く。久しぶりに会う顔ばかりで、穏やかな時間だった。
その空気が、五十代の叔母のひと言で止まった。
「2万円しか包んでないよね、あなた」
何の話なのか、一瞬わからなかった。去年のいとこの結婚祝いのことだと気づくまでに、少し間があった。
箸を持つ手が止まる。さっきまで笑っていた向かいの親戚が口を閉じ、目だけをこちらに向けた。
会話が途切れて、つけっぱなしのテレビの音だけが、やけに大きく聞こえた。
「うちは3万円渡したよ。親戚なんだから、もう少し気持ちを見せないと」
叔母は笑いながらそう続けた。意地悪をしている顔ではない。自分の物差しがいちばん正しいと、心から信じている顔だった。
額をどう決めたのかを、この場で説明する気にはなれなかった。人にはそのときどきの事情がある。ただ、それだけのことだ。
「そのときの状況で決めただけです」
私はそう返したが、叔母は引かなかった。
「若いんだから見栄張らんと。うちの息子は全部3万円以上よ」
笑顔を消さないまま、私が伝えたこと
周りの親戚は気まずそうに黙っていた。
誰も止めない。箸の音だけが響いて、誰かが小さく咳払いをした。ここで苦笑いのまま流してしまえば、この話は先々まで、集まるたびに何度でも蒸し返されるのだろう。
母にも、名前を出されたいとこにも、そのたびに気まずい思いをさせることになる。そう思った。
私は箸を置いて、笑顔は消さないまま、叔母のほうを向いた。
「叔母さん、包む額って、そのときどきの事情で決めるものですよね。よその家がいくら包んだかを、こういう席で数えるのはやめませんか」
声を荒らげたわけではない。責めるような口調にもしなかった。ただ、はっきりと言った。
「みんなでご飯を食べている場で、出す話ではないと思います」
叔母は何か言いかけて、そのまま口を閉じた。短い沈黙のあと、別の親戚が「そうよね」と静かに続けてくれた。
それをきっかけに、話題は庭木の手入れへ移っていく。叔母もいつのまにか、その輪に入って笑っていた。
帰り道、母は前を向いたまま短く言った。
「よく言った」
それだけだった。慰められるより、その短いひと言のほうがずっとうれしかった。あの食卓で黙らずに済んだことを、流れていく景色を見ながら、静かにかみしめていた。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Fortune Editorial
編集部
占いや血液型などの視点を通して、自分自身と向き合うきっかけを届ける編集部チームです。星の巡りや運勢、血液型による性格傾向や人との関わり方などをヒントに、今の気持ちを整理したり、これからの選択を考えたり。占いを“答え”ではなく、自分を知るためのヒントのひとつとして捉えています。不安をあおるのではなく、心を整え、自分を理解するための言葉を。日常にそっと寄り添う占い・血液型コンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


