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「助けに来たるからな」怖そうだった常連客。だが、真顔で放った冗談とは

見た目が少し怖い常連客
今から三十年ほど前、二十代だった私は、金融機関の窓口で働いていました。
まだ仕事に慣れていなかった頃、少し緊張する男性客がいました。定期的に通帳を持ってやってくる、体格のいい方です。
太い眉に鋭い目つき。声も低く、最初の頃は通帳を差し出しながら、
「今日はこれ、頼むわ」
と短く言うだけでした。
ところが、実際に応対してみると、横柄なところはありません。
新人だった私は確認に時間がかかることもありました。あるとき「すみません、もう一度確認します」と伝えると、男性は首を横に振りました。
「ええよ、ええよ。慌てんで。間違わんかったらそれでええ」
その言葉に、見た目だけで怖い人だと思っていた自分が少し恥ずかしくなりました。
何度か応対するうちに私の緊張も薄れ、「今日は暑いですね」など、ちょっとした話を交わすようになっていきました。
「ちゃんと休み、あるんか?」
ある日、いつものように手続きを終え、私は男性に通帳を返しました。
「お待たせしました。こちらで大丈夫です」
「おう、ありがとう」
男性は通帳をしまい、窓口を離れようとしました。
ところが数歩進んだところで、ふいに振り返ったのです。
「そういや、あんた」
「はい?」
男性は私の窓口を指さしました。
「俺が来るとき、いっつもそこにおるな」
男性が来る時間帯は、たまたま私がその窓口を担当していることが多かったのです。
「そうですね。よくお会いしますね」
私が笑うと、男性は少し考えるような顔をしました。
「……ちゃんと休み、あるんか?」
「ありますよ」
思わず笑って答えると、男性は「そうか」とうなずきました。
そして真顔のまま、ぽつりと言ったのです。
「いつ来てもおるから、ここに閉じ込められとるんかと思ったわ」
「そんなわけないじゃないですか」
私が吹き出すと、男性もようやく少し笑いました。
「まあ、もしここに閉じ込められたら、助けに来たるからな」
「本当ですか?」
「おう。そのときは任せとけ」
「じゃあ、もしものときはお願いします」
私がそう返すと、男性は満足そうにうなずき、今度こそ帰っていきました。
隣の窓口にいた先輩が、その背中を見送りながら笑いました。
「ずいぶん頼もしい人がついたね」
「ほんとですね。最初はあんなに怖かったのに」
私も笑いながら答えました。
見た目は少し怖くても、実際には穏やかで、少し不器用な冗談を言う人だったのです。
あれから長い年月がたちましたが、真顔で「助けに来たるからな」と言ってくれたあのときのことは、今でも忘れられません。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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