Share
「妊娠したよ」彼女からの報告を喜び家族中に伝えた。後日、彼女の最悪の裏切りを知りつつも、出産を見届けたワケ
INDEX

妊娠報告
19歳のときに知り合った彼女と、付き合って4年目に同棲を始めた。
社会人2年目、23歳の春のことだ。
狭い1Kに荷物を詰め込み、休日は二人で買い出しに出かけ、ようやく家庭らしい空気が回り始めたころだった。
同棲が数ヶ月過ぎたある夜、仕事から帰ると彼女が玄関までいつになく早足でやってきた。手元には、封の切られたばかりの白い箱がある。
「妊娠したよ」
頭の奥がふっと熱くなり、思わずその場で彼女を抱き寄せた。実家の親、職場の先輩、学生時代からの友人たちにまで、その夜のうちに片っ端から報告した。
「やっと所帯持つのか」と笑ってくれる先輩。
「式はいつにする?」と前のめりになる母。
返ってくる祝福を一つずつ読み返していると、父になる実感が指先まで届いてくる気がした。
週末には母子手帳を取りに行き、休日のたびにベビー用品店を眺めては、彼女と相談しながら少しずつ買い揃え始めた。
友人の告発と泳がせた数か月
異変は数日後、地元の友人と二人で飲んでいたときに訪れた。
彼が缶を握ったまま、視線を落として切り出す。
「お前に言うか、ずっと迷ってたんだ」
続けて告げられた名前は、中学からの知り合いだった。
彼女とも顔見知りで、何度か三人で同じ席で飲んだこともある男だ。
喜びでいっぱいだった胸の中身が、音もなく入れ替わっていく感覚があった。動画も場所も日時も、地元のグループの誰かが偶然見ていたという。
冗談で済む状況でないことは、友人の表情ですぐに分かった。
その夜、家に帰っても彼女には何も言わなかった。
問い詰めて泣かれて、それで終わらせるのが一番楽なのは分かっていた。
だが、お腹の中の子が誰の子かも分からないまま、ただ許すという選択肢だけは選びたくなかった。
(だったら最後まで泳がせて、はっきりさせよう)
仕事帰りに弁護士事務所へ立ち寄り、出産後にDNA鑑定をかける段取りを静かに整えた。
彼女の前ではこれまで通り優しい予備の夫の顔を続け、産婦人科の付き添いも両親との顔合わせも、表情を崩さずにこなした。
出産が終わり、産まれたばかりの赤ん坊から検体を取って鑑定に回す。
結果は、想像した通りだった。
私の子ではないと紙の隅に書かれていた。
事務所を通じて彼女と相手に通知を出すと、二人とも驚くほどあっけなく折れた。慰謝料の金額は、生活を立て直すのに十分な額だ。涙ながらに謝る彼女に、私は何の感情も湧かなかった。長く泳がせていた魚を、ようやく水から上げた。それだけの夜だった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
登場人物から探す
テーマ・シチュエーションから探す
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事

