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「どちらさまですか」一人暮らしの部屋に突然入ってきた男性。翌日、先輩の一言に背筋が凍った

鍵をかける習慣がなかった
就職をきっかけに、生まれ育った町を離れました。
電車もバスも、一時間に一本あるかないかという場所です。
二十二年間、そこで暮らしてきました。
実家では、日中に玄関の鍵をかけることはほとんどありません。
畑から戻った祖母が土間に野菜を置き、近所の人が回覧板を上がり框に置いていきます。
家族全員が寝る前になって、ようやく玄関の鍵をかける。
そんな生活が当たり前でした。
新しく住み始めたのは、勤務先から電車で二駅ほど離れた古いアパートです。
初めての一人暮らしでしたが、部屋の中にいるときまで鍵をかけるという考えはありませんでした。

夜九時、玄関の扉が開いた
引っ越して数日が過ぎた夜のことです。
床に座り、テレビを眺めていると、玄関からガチャッという音が聞こえました。
次の瞬間、扉が開きます。
立っていたのは、見覚えのない男性でした。
男性は靴を履いたまま、部屋の中へ一歩入ってきました。
私は声を出すことも、立ち上がることもできません。
何が起きているのか理解できず、ただ男性の顔を見つめていました。
男性も私と目が合うと、動きを止めます。

部屋の中を見回し、自分の足元を確認してから、小さな声を漏らしました。
「……あれ?」
「どちらさまですか」
ようやく出た声は、自分でも驚くほど震えていました。
「すみません。ここ、二〇三号室ですよね」
「二〇一号室です」
「二〇一……本当にすみません。部屋を間違えました」
男性は慌てて廊下へ戻り、何度も頭を下げながら扉を閉めました。
その後、廊下を歩く足音が聞こえ、少し離れた部屋の扉が開きます。
どうやら、同じ階に住む男性が部屋を間違えただけだったようです。
部屋には、男性が入ってきたときの酒のにおいが、わずかに残っていました。
近所の人でよかった
翌日の昼休み、職場の先輩に昨夜の出来事を話しました。
「部屋にいるとき、鍵をかけてなかったのか?」
「実家では、寝る前までかけなかったので……」
「こっちでは、部屋に入ったらすぐにかけたほうがいいぞ」
先輩は弁当の蓋を置き、真剣な顔でこちらを見ました。
「入ってきたのが、近所の人でよかったな」
その一言を聞いた瞬間、背中が冷たくなりました。

男性が部屋を間違えたから、何事もなく終わっただけです。
もし、最初から誰かがいる部屋を狙って入ってきたのだとしたら。
昨夜の私は、立ち上がることも、助けを呼ぶこともできませんでした。
入ってきた相手が誰であっても、同じように動けなかったはずです。
その日の帰宅後、部屋に入るとすぐに玄関の鍵を回しました。
カチッという音が、いつもより大きく聞こえました。
あれから十年以上が経ちました。
今では、扉を閉めて鍵をかけるまでが、一つの動作になっています。
実家に帰ると、玄関は今も昼間のあいだ開いたままです。
懐かしい土間に立つたび、あの夜に聞いた扉の音を思い出します。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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