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「1円玉も、お金ですので」落としてしまった小銭。だが、別の売り場の店員の対応に心温まった瞬間

窓際に並ぶ白い大机
開店直後の店内は、レジの列がゆっくり流れます。その日も、常連の女性のお客様の会計を済ませたところでした。
「ありがとうございました」
お客様は窓際へ歩いていきます。
うちの店では、大きな白い机が並んだ場所で、買った品物を袋に詰められます。
硬貨が床に散る音が聞こえたのは、次のお客様の商品を通しているときです。
顔を上げると、その女性が机の前にしゃがみ込んでいました。
「どうされましたか」
声をかけたのは、私ではありません。
通路を挟んだ向こう側、電気コーナーの男性店員でした。
「レジ袋に入れる途中で、落としました」
「お財布ごとですか」
「小銭だけ、全部です。机の下まで転がってしまって」
白い机が動いた
その机は、大人が両手で抱えてやっと動く大きさです。脚の奥は暗く、腕を伸ばしても指先が届きません。
男性店員は袖をまくって、机の端に手をかけました。
「少し失礼します」
一つ目の机が、ゆっくり横へずれていきます。床には十円玉と五円玉が散らばっていました。
「こちらにありました」
「そんな、そこまでしていただかなくても」
「いえいえ」
二つ目、三つ目と、机は同じ手順で動かされます。見つかるたび、硬貨はお客様の手のひらへ返されました。私は持ち場を離れられず、かがんだ背中を見ていることしかできません。
最後の一枚が出るまで
三つの机が元に戻るころには、お客様の手のひらは硬貨でいっぱいでした。
「もう十分です。あとは1円玉くらいですから」
「1円玉も、お金ですので」
男性店員はそう言って、今度は窓の下の細い溝に指を入れました。壁と床のあいだの、わずかな段差です。
「ありました」
つまみ上げられたのは、確かに1円玉です。
「これで全部だと思います」
お客様はしばらく、手のひらの硬貨を見つめていました。
「ここまでしてくださる方、いませんよ」
「落ちていたら、拾うだけですから」
隣で袋詰めをしていた別のお客様が、こちらを向いて言いました。
「いい店員さんがいるね」
男性店員は机の位置を確かめてから、電気コーナーへ戻っていきます。帰り際、女性のお客様がレジの前で足を止めました。
「また、ここで買い物します」
自動扉が閉まったあと、通路の向こうを見ました。男性店員はもう別のお客様の前で、棚の商品を指して説明を始めています。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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