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「水も出さない店なのか」お店のルールに不満をぶつける客。最後まで納得してもらえなかった

「水も出さない店なのか」お店のルールに不満をぶつける客。最後まで納得してもらえなかった
手が挙がった昼のホール
働いていたのは、定食と丼を出す大衆食堂のような店です。
水とおしぼりはお客様に取っていただく形で、入口の脇と給水機の上、レジの横の3か所に案内の紙を貼っていました。
昼の混み合う時間、奥の席から手が挙がりました。
テーブルの呼び出しボタンは、押されていません。
「水も出さない店なのか」
四十代くらいの男性が、何もないテーブルを指で示しました。
「申し訳ございません。お水とおしぼりは、あちらのコーナーでお取りいただく形になっておりまして」
「なんで注文を取りに来ない。座ってからずっと待ってるんだけど」
「ご注文はこちらのボタンでお呼びいただけましたら、すぐに伺います」
男性の眉が寄りました。説明がうまく届いていないのが、その顔で分かります。
3か所に貼った紙
体の向きを変えて、給水機の上の紙を手で示しました。
入口の脇にも、レジの横にも同じ紙があります。
「あちらと入口と、レジのところにも、同じご案内を出しております」
「そんな紙、誰が見るんだよ」
「見えにくいところに貼っておりまして、申し訳ございません」
「気づかない場所に貼っておいて、案内も何もないだろ」
頭を下げるほど、話は前に進みませんでした。
「そうじゃなくて、なにすんの」
何をすればいいのかと聞かれている。そう受け取って、お冷やとおしぼりを持って戻りました。
「お待たせしました。ご注文をお伺いします」
「……日替わりで」
注文は通りました。それでも、男性の顔はほどけないままです。
端の浮いた紙を押さえて
料理を運んだときも、器を下げに行ったときも、返ってくるのは短い返事だけでした。
会計のとき、男性はレジの横の紙を一度だけ見ました。読んだのかどうかは分かりません。
「次からは、最初に持ってきてよ」
「ご意見、ありがとうございます」
それ以上、言える言葉がありませんでした。
伝えるべきことは全部伝えたのに、伝わった手応えだけが来ません。
自動ドアが閉まると、店内の話し声がゆっくり戻ってきます。
「大丈夫だった?」
厨房から顔を出した店長に、私は首を横に振りました。
「説明は、ちゃんとできたと思うんですけど」
「できてたよ。それでも通らない日はある」
給水機の上の紙は、端が少し浮いていました。指で押さえ直して、私は次のテーブルへ向かいます。
店内の3か所で、同じ言葉が今日も黙って待っていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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