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「3000円以内で探してるのに、どれもしっくりこないのよね」贈る相手を尋ねた店員の一言で、女性客の探し物が決まった瞬間

「3000円以内で探してるのに、どれもしっくりこないのよね」贈る相手を尋ねた店員の一言で、女性客の探し物が決まった瞬間
週末の夕方、混み合う売り場
雑貨店で働いて三年目、週末の夕方はレジと接客をひとりで回す時間帯でした。
会計の列が途切れず、かごを抱えたお客様が棚のあいだを行き来しています。
その中に、食器の棚の前からずっと動かない女性のお客様がいました。
五十代の後半くらいでしょうか。マグカップを手に取っては戻すのを繰り返しています。
眉のあたりに、迷っている時間の長さが出ていました。
「3000円以内で探してるのに、どれもしっくりこないのよね」
独り言のような、けれど確かに届く声でした。
列がひと段落したところで、私は棚のほうへ向かいました。
お相手の好みを伺う
「何か特別な贈り物ですか」
「……ええ、まあ」
「もしよろしければ、お相手のお好みを教えていただけますか」
お客様は少し驚いた顔をして、手にしていた花柄のカップを棚へ戻しました。
「娘に。今度、ひとり暮らしを始めるのよ」
「そうなんですね。お部屋はもう決まっていますか」
「狭いワンルームだけど、窓だけは大きいのよ」
話しながら、声の角が少しずつ取れていくのが分かりました。
私は棚の下の段から、生成りに近い薄い色のマグカップを取りました。
飾りはありませんが、縁が厚く、両手で包める大きさです。
「これならどんなお部屋にも合いますし、使うたびにホッとされると思いますよ」
「持ってみてもいい?……軽いのね。それに、あの子が好きそうな色だわ」
値札は2800円でした。ご予算の中に、きちんと収まります。
「それがいいわ」
リボンを結ぶあいだの話
包装台でリボンを結んでいるあいだ、お客様の話は止まりませんでした。
「昔は甘い牛乳すら『いらない』って嫌がっていた子なのに」
「そうだったんですか」
「それが今は、朝にコーヒーがないと動けないんですって。おかしいでしょう」
結び目を整える手元を、じっと見ていらっしゃいました。
「引っ越しの日は、私は行かないの。泣くから」
紙袋の口を折り、両手でお渡ししました。
「お嬢様、きっと毎朝使われますよ」
「あなたに相談して本当によかった。ありがとう」
そう言って差し出された手を、両手で握り返しました。小さくて、温かい手でした。
自動ドアの外で一度立ち止まり、紙袋を持ち直してから歩いていく後ろ姿が見えました。
あの日から、棚の前で長く迷っているお客様がいると、自然と足が向くようになりました。
「贈り物をお探しでしょうか」
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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