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「こんなぬるいもの、お客さんに出していいと思ってるの?」と言いながら全部飲み干した母。だが、店員の一言で態度が一変

湯気の立つカップを前にして
小学生だった頃、母と祖母に連れられてデパートの上の階にある喫茶店に入りました。
私はケーキと紅茶、母と祖母はコーヒーのセットです。
運ばれてきたカップからは、白い湯気が立っていました。
母が一口飲んで、眉を寄せました。
「わっ、ぬるい」
母は片手を上げて、ホールにいた若い女性の店員さんを呼び止めました。
「こんなぬるいもの、お客さんに出していいと思ってるの?」
祖母も身を乗り出します。
「これで1杯いくらだと思ってるの」
「申し訳ございません。すぐにお取り替えいたします」
けれど二人の説教は、そこから何分も続いたのです。
店員さんの顔から色が抜けていきます。近くの席の人たちが、こちらを見ていました。
私は椅子の上で、フォークを握ったまま動けませんでした。
それでも一滴も残さずに
温め直したコーヒーが届くと、母はこう言いました。
「嫌味なほど熱くして。これじゃ香りが飛ぶじゃない」
それなのに、二人はきれいに飲み干しました。
テーブルの上には、空になったカップが三つ並んだのです。
伝票を手に、母が立ち上がりました。
レジで、母は伝票をカウンターに置きました。
「会計は必要?」
店員さんが息をのむのが分かりました。
「ぬるいものを出されたんだから、結構ですって言うのが筋でしょう」
祖母が続けます。お金がないわけではありませんでした。
「あなたは外で待ってて」
私は店の入り口の脇の椅子に座らされました。
責任者が示した伝票
ガラス越しに、レジの前がよく見えました。
店員さんの後ろから、この店の責任者らしい年配の男性が出てきました。
「お待たせして申し訳ございません」
男性は深く頭を下げ、伝票をそっと二人へ向けました。
「ぬるかった件は、こちらの落ち度です。お詫びいたします」
母が勝ち誇ったような顔をしたのが、外からでも分かりました。
「ですが、お代はいただきます」
「お詫びするって、今言ったでしょう」
「お二人とも、最後まで召し上がっていらっしゃいますので」
静かな声でした。頭を下げたまま、伝票を引く気配はありません。
祖母が何か言いかけて、口を閉じました。
レジに並ぶお客さんたちが、じっと二人を見ています。
母の手が、鞄の中を探りはじめました。
「……いくら」
結局、二人は黙って支払いました。おつりを受け取る手が震えていました。
店を出てきた二人は、私の名前も呼ばず、足早にエスカレーターへ向かいます。私は小走りで後を追いました。
大人の言うことは正しいのだと思っていました。
間違っていたのは、あの店員さんではなく、私の身内のほうだった。
そう分かったのは、あの日が最初でした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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