Share
「水道代が2万、生活できんぞ」私の両親まで呼びつけた義父。だが、思わぬ勘違いに絶句

突き出された検針票
夫の転勤が決まり、私と二歳の息子だけが、義父母の家で暮らすことになった。
義母は穏やかな人で、どうにかやっていけると思っていた。
それが崩れたのは、同居から二ヶ月が過ぎた朝だった。台所に立つ私の背中へ、義父がずかずかと近づいてきた。
「水道代が2万、生活できんぞ」
突き出された紙には、たしかに二万円を超える金額が並んでいた。
「うちは今まで、こんな額になったことは一度もない」
「すみません、子どもの服を洗う回数が多くて……」
「多すぎるんだ。垂れ流してるのと同じだろう」
義父は私の返事も待たず、電話の子機を取り上げた。
覗き込むと、受話器の向こうから聞こえてきたのは、私の母の声だった。
両親を座らせて始まった説教
その日の夕方、片道一時間かけて、私の両親が座敷に呼びつけられた。
父は着慣れないスーツで、母は菓子折りを抱えて、玄関で深々と頭を下げた。
義父は上座に腰を下ろすと、検針票を畳の上に滑らせた。
「どんな生活をしてきたのか知りませんが、こんな水の使い方では、生活できませんよ」
父の肩が、わずかに動いた。母は膝の上で手を握りしめ、「申し訳ありません」とだけ繰り返している。
「娘さんの躾の問題です。うちの家計を圧迫されては困る」
頭を下げる両親の横で、私だけが言い返すこともできなかった。
そのとき、お茶を運んできた義母が、畳の上の紙をひょいと覗き込んだ。
紙の隅に印刷されていた日付
「お父さん、これ、2ヶ月分よ」
座敷が、しんと静まり返った。
義母が指さした紙の隅には、検針の対象期間として二ヶ月ぶんの日付が並んでいた。
この地域の水道は、二ヶ月に一度まとめて請求される。
2万は、一ヶ月に直せば一万円ほど。大人三人と子どもが暮らす家として、なんの異常もない額だった。
義父の顔から、みるみる血の気が引いていった。
「…いや、しかしだな」
言いかけて、飲み込む。畳の上の検針票へ伸ばした手が、宙で止まった。父の視線から逃げるように、義父は目を伏せた。
「……そうなのか」
それだけだった。
謝罪の言葉は、最後まで出てこない。私は、その伏せられた顔に向かって言った。
「お義父さん。うちの両親は、一時間かけて来ています。ご説明をお願いします」
父が小さくうなずいた。母も顔を上げた。
義母までが湯呑みを置いて、義父の返事を待っている。
義父は絞り出すように「……手違いだった」とだけ言うと、そそくさと座敷を出ていった。
あの日から、義父が水道の話を持ち出すことは二度となくなった。
廊下ですれ違えば、目を合わせずに小さく会釈をしていく。検針票は、義母が受け取るようになった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


