Share
「600万だけだと、そう聞いていた」結婚前に明かしてくれた夫の借金。だが、夫が隠していた秘密に絶句

「600万だけだと、そう聞いていた」結婚前に明かしてくれた夫の借金。だが、夫が隠していた秘密に絶句
付き合っていた頃に聞いた金額
夫と付き合っていた頃、この人ほど穏やかな人はいないと思っていた。
私が仕事で落ち込んだ日は、何を言うでもなく隣に座って、話し終わるまで待っていてくれた。
人の弱っているところに気づける人だと、その頃の私は信じていた。
彼には借り入れがあった。
自分の店を持つために借りたのだと、隠さずに打ち明けてくれた。
金額も、そのときにはっきり口にした。隠してもいずれ分かることだから、と彼は言った。
「600万だけだと、そう聞いていた」
正直に話してくれたことが、私にはむしろ嬉しかった。
二人で働けばいつかは返せない額ではない。そう思って、私は結婚を決めた。
数が合わないと気づいた夜
結婚してから、私も夫の店に入って一緒に働くようになった。
売り上げから返済に回すぶんを取り分ける役目は、自然と私のものになった。
何度目かの月に、電卓を打つ手が止まった。
返している額と、残っているはずの額の釣り合いが取れない。
何度やり直しても、私の頭にある数字にはならなかった。
帳面を閉じても、その食い違いはずっと頭の隅に残っていた。
「なんか借金の金額が合わないんだけど」
夫はしばらく黙ってから、困った顔でこう言った。
「実はこっちにも借りてるんだ」
足し合わせると900万あった。
そのうえ、夫の姉から借りている200万が別にあることも、同じ時期に分かった。
お義姉さんは催促ひとつせず、私にはいつも変わらず優しい人だった。
責めたい気持ちはあった。
でも、そこで言い合っても借りたものは減らない。
私は紙を一枚出して、夫の前に置いた。
「どこから、いくら。全部この紙に書いて」
夫は黙って書いた。書き出されたものを上から順に並べ直して、私は一番下に線を引いた。
「ここに書いてあるぶんが、うちの全部ね」
夫は小さくうなずいた。
その日から紙は台所の引き出しに入れて、決まった日に二人で開くことにした。
そこからは、決めたぶんを毎月積むだけの日々だった。
旅行は後回しにしたし、欲しいものはたいてい諦めた。それでも紙の欄がひとつずつ消えていくのは、思っていたよりずっと励みになった。
季節が変わるたび、去年より減っていることだけを確かめた。
最後の一行に線を引いたのは、10年目だった。
「終わったね」
夫は今も、あの頃のことをよく覚えていない。
聞いた額と違っていたことも、紙を書いた夜のことも、認めないままだ。それでも私は、我慢の10年だったとは思っていない。
二人で働いて返しきった。あの紙は今も、引き出しの奥にしまってある。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


