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「ほら、ちゃんと座ろうね」旅館で不安そうな表情をしている子供。だが、仲居さんの対応で心温まった瞬間

「ほら、ちゃんと座ろうね」旅館で不安そうな表情をしている子供。だが、仲居さんの対応で心温まった瞬間
家族旅行の夕食、隣に座った子連れ家族
家族でのんびり過ごせる温泉旅行が、私のいちばんの楽しみだった。
その日泊まった宿は、通された部屋の窓から山あいの景色が一望できる、静かで気持ちのいい旅館だった。
荷ほどきもそこそこに、私たちは窓辺で写真を撮り、夕食までのあいだに温泉へ浸かって旅の疲れをほどいた。
湯上がりの火照った頬のまま向かった食事会場は、出汁のいい香りに満ちていた。
広間にずらりと並んだお膳を前にすると、それだけで旅に来たのだと胸が弾んだ。
席に着いてほどなく、すぐ隣に小さな男の子を連れた家族が案内されてきた。
三、四歳くらいだろうか。
慣れない場所と大人ばかりの空間に緊張しているのか、椅子にも座らず、お母さんの後ろに隠れるようにしてもじもじしている。
「ほら、ちゃんと座ろうね」
お母さんが困ったように声をかけても、男の子はますます身を縮めてしまう。
ご両親の表情に、少しだけ申し訳なさそうな影がよぎったのが分かった。
仲居さんがかけた、やわらかな一言
そこへ、料理を運んできた仲居さんが、そっと膝を折って男の子と目線を合わせた。
「椅子もお食事も、ご用意します」
そう言うと、仲居さんは子ども用の椅子を運び、小さな手でも持ちやすいお皿を並べていく。
急かす様子はまるでなく、その手つきはどこまでも穏やかだった。
「今日はゆっくり、旅行を楽しんでくださいね」
にっこり笑ってそう声をかけられ、男の子の強張っていた肩から、ふっと力が抜けたのが見えた。
お母さんも、ほっとしたように目元をゆるめている。
「ありがとうございます、助かります」
「とんでもない。お子さまのペースで大丈夫ですからね」
その光景を、私は隣の席から見るともなしに眺めていた。
ただ料理を運ぶだけではない。お客さんが安心して食卓につけるように、さりげなく気を配っている。
仕事だから、と割り切ればそこまでしなくてもいいはずのことを、その仲居さんはごく当たり前のようにやってのけていた。
そのことが伝わってきて、なんだか私の胸まで温かくなっていた。
気づけば隣の男の子は、小さな椅子にちょこんと座り、嬉しそうにお箸を握って、お母さんに何かを話しかけている。
さっきまでの緊張した表情は、もうどこにもなかった。
帰りの朝、玄関で見送ってくれた宿の方々は、一組ずつ丁寧に頭を下げてくれた。あの仲居さんも、私たちに気持ちのいい笑顔を向けてくれる。
「またお待ちしております」
その一言に、私は迷わず「また来ます」と返していた。旅先で出会った人のやさしさが、この旅を特別なものにしてくれたのだと思う。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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