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「遅すぎんぞ!どうなってんや!」運転手を怒鳴りつけた男。だが、運転手が冷静な一言でいなした結果

帰宅ラッシュの車内に響いた怒声
金曜の夕方、仕事を終えて乗り込んだバスは、帰宅を急ぐ人でぎゅうぎゅうに混み合っていた。
私は運よく後方の席に座れて、窓の外を流れる街並みをぼんやり眺めていた。
信号のたびに止まり、車体はのろのろとしか進まない。それでも、疲れた体を預けられるだけありがたかった。
途中の停留所から乗ってきた男性が、私の隣にどかりと腰を下ろした。
四十代くらいだろうか、席につくなり大きなため息をつき、貧乏ゆすりを始める。落ち着かない様子で、何度も腕時計に目をやっていた。
次の瞬間、男はいきなり立ち上がった。つり革につかまる乗客の間をかき分け、運転席のほうへずんずんと進んでいく。
そして、運転手の背中に向かって声を張り上げた。
「遅すぎんぞ!どうなってんや!」
車内の空気が、一瞬で凍りついた。おしゃべりも、スマホをいじる指先も、みんなぴたりと止まる。
誰もが息をひそめ、目の前のやり取りに気づかないふりを決め込んでいた。
「こっちは急いどるんや。なんでこんなにトロトロ走るんや」
男の声はますます大きくなる。運転手はハンドルを握ったまま、前をまっすぐ見据えて運転を続けていた。
運転手が返した冷静な一言
信号が赤に変わり、バスがゆっくりと停まった。その間を突くように、男はさらに詰め寄る。
「聞いとるんか!?」
運転手は、慌てるでも言い返すでもなく、落ち着いた声で答えた。
「安全運転のためですので、ご了承ください」
短く、それでいてきっぱりとした一言だった。感情のかけらもない、けれど揺るぎのない声。男は出鼻をくじかれたように、口を半分開けたまま黙り込んだ。
「……ちっ。だったらもっと上手く回せや」
それでも捨て台詞のように文句を吐き続けるが、運転手は二度と取り合わなかった。
ただ淡々と、青信号を確認してアクセルを踏む。男の言葉は次第に勢いを失い、ぶつぶつとした独り言に変わっていった。
やがてバスが次の停留所に停まると、男はばつが悪そうに舌打ちをひとつ残し、逃げるようにステップを降りていった。
ドアが閉まる。その瞬間、張り詰めていた車内の空気が、ふっとほどけた。
誰からともなく、小さく息を吐く音が漏れる。前のほうに立っていた年配の女性が、運転席に向かって軽く会釈をした。
運転手はバックミラー越しにちいさくうなずき、何事もなかったように運転を続ける。
声を荒らげた者が去り、静けさを守り抜いた者だけが残った車内。
窓の外はいつの間にか日が落ちて、街の灯りがぽつぽつと灯り始めていた。私は、あの落ち着いた背中を、しばらく眺めていた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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