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「少し急いでるから、先に買わせてくれ」並ぶ客を無視した男。だが、店員が静かに告げた正論とは

列を無視して前へ出た男
仕事帰りにコンビニへ寄ったときのことです。
レジには数人が並んでいて、私もその最後尾に立って順番を待っていました。
夕方の混み合う時間帯で、みんな仕事や用事の合間に立ち寄ったのでしょう。
それでも列は文句ひとつなく、静かに前へ進んでいました。
そこへ、後から入ってきた中年の男が、列を確かめもせずレジの真ん前までずかずかと進んだのです。
缶コーヒーを一本、当然のようにレジ台へ置きました。
「少し急いでるから、先に買わせてくれ」
頼むというより、そうするのが当たり前だといわんばかりの口ぶりでした。
並んでいた人たちは困った顔で目を見合わせましたが、雰囲気を悪くしたくないのか、誰も口を開きません。
私も、喉まで出かけた言葉を飲み込んでしまいました。
ほんの少しの割り込みでも、黙って許してしまえば、律儀に並んでいる自分たちが損をする。
そうは思っても、見知らぬ人と揉めたくない気持ちのほうが勝ってしまうのです。
レジにいたのは若い男性の店員でした。彼は缶に手をつけず、静かに顔を上げたのです。
店員が静かに通した筋
「お待ちの方が、先にお並びです」
声を荒らげるでも、嫌味をこめるでもない。
ただ淡々と、視線だけで列のほうを示しました。
「一本だけだって。会計なんてすぐ終わるだろう」
男は舌打ちしながら食い下がります。
それでも店員は、表情を変えませんでした。
「順番は、順番ですので」
「あちらのお客様から、ご案内します」
「……こっちは急いでるんだ」
男がそう言いかけたそのとき、彼はようやく背後に気づいたようでした。
列に並んだ全員が、自分をじっと見ている。
その視線に、急いでいるという勢いが、みるみるしぼんでいったのです。
男は口の中で何か言い返そうとして、そのまま言葉を飲み込みました。
周りを見回す目が、落ち着かなげに泳いでいます。
「…ああ、そうかい」
缶を持ったまま、男はばつが悪そうに列の最後尾へ回りました。
誰も一言も責めないのに、その沈黙のほうがよほど効いたようです。
あんなに堂々としていた人が、順番という当たり前をたった一言告げられただけで、こんなにも小さく見えるものなのか。
私は妙に感心してしまいました。
私の番が来て会計をするあいだ、男はうつむいて自分の順番を待っていました。
さっきまでの「少しだけ」という顔は、もうどこにもありません。
「お待たせしました」
店員は最後まで声色を変えず、私にも同じように頭を下げました。当たり前のことを、当たり前に通す。それがこんなに気持ちのいいものかと、レジ袋を提げて店を出たのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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