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「後ろのスタッフ、私語が多い」小言が多い客。閉店間際、電話での小言に背筋が凍ったワケ

「後ろのスタッフ、私語が多い」小言が多い客。閉店間際、電話での小言に背筋が凍ったワケ
指の先で示された申込書
接客の仕事を続けて、十年以上になります。
顔を覚えたお客様が増えるほど、仕事は楽になるものだと思っていました。
その男性が来るようになったのは、去年の春です。
五十代くらいで、季節を問わず紺色の上着を着ていました。
「レジに書類を置かないほうがいい」
カウンターの端に置いた申込書を、指の先で示されました。
「申し訳ありません。すぐに下げます」
「お客さんの名前が見える場所に出すな。前にも言ったよね」
声は大きくありません。
抑えた低い声のまま、言葉だけが細かく刺さります。
「後ろのスタッフ、私語が多い。さっき笑っていたのは誰」
指摘の内容は、どれも間違っていません。だから言い返せません。
頭を下げて、書類を引き出しにしまいました。
その髪型、似合ってるよ
次に姿を見たのは、一週間後でした。
身構えた私に返ってきたのは、まるで別の声です。
「元気そうだね。その髪型、似合ってるよ」
顔を上げると、口元がゆるんでいます。
前回のことには触れません。
「いつも助かってるよ。ありがとう」
「…ありがとうございます」
出ていく背中を見ながら、隣のレジの同僚が小声で言いました。
「今日は、機嫌のいい日だったみたいですね」
機嫌のいい日、という言い方が耳に残りました。
そう呼ぶからには、そうでない日がある。
どちらの日なのかは、自動扉が開くまで誰にも分かりません。
受話器を置けなかった夜
電話が鳴ったのは、閉店間際でした。
受話器を取ったのは私です。
「先週の件だけど、まだ直っていないよね」
名乗られる前に、誰か分かりました。
「申し訳ありません。どちらの件でしょうか」
「分からないなら、最初から説明する」
そこから2時間、受話器を置けませんでした。
話は書類の位置から始まり、私語の話に移り、途中で隣の駅の系列店の話にすり替わります。同じ話が、何度も最初へ戻ってきました。
謝るたびに、声がわずかに上機嫌になるのが分かります。
「君は話が分かるね。前にも言ったけど、いい子だよ」
褒められているのに、受話器を持つ手が冷たくなりました。
電話を切ったとき、時計は十一時を回っていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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