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「疲れた、座らせてよママ」バスで大声を上げた子供と、知らんぷりを続けた母親。だが、運転手の対応で空気が一変

夕方の車内に響いた声
平日の夕方、帰りの時間帯のバスは通路まで人で埋まっていました。
途中の停留所から、幼稚園くらいの女の子とお母さんが乗ってきます。
女の子は人の間をすり抜けて、前のほうの座席まで進んでいきました。
座席の縁に両手をかけて、体をあずけるようにもたれかかります。
「疲れた、座らせてよママ」
車内じゅうに響く声でした。
座っていた人が、困った顔で身を引きます。
お母さんは少し離れたつり革につかまったまま、手元の画面に目を落としていました。
「ママ、ここ座りたい」
返事はありません。聞こえていないはずのない距離でした。
3回かかった周りの声
見かねた年配の女性が、やんわりと声をかけました。
「お母さん、抱っこしてあげたらどうですか」
「えー怖ーい」
お母さんは笑ってそう言っただけで、顔も上げませんでした。
しばらくして、別の人がもう一度声をかけます。
「よその方の席ですから、離れましょうね」
それにも、お母さんは曖昧に笑うだけでした。
さらにもう一人が声をかけ、3回目になっても、女の子の手は座席にかかったままです。
(せめて、抱っこしてあげればいいのに)
そう思いながら眺めていましたが、席を譲る人は結局ひとりも出ませんでした。
停留所で振り返った運転手
次の停留所でバスが停まり、扉が開きました。
乗り降りが終わったあと、運転手が体をひねって車内のほうを向きました。責める調子は、まったくありません。
「お子さん、お疲れのようですね」
お母さんが、はじめて画面から顔を上げました。
「前の補助席が空いていますので、どうぞお使いください」
「あ、はい」
「走り出す前にお願いします」
お母さんは口を開きかけて、そのまま何も言わずに女の子の手を引きました。
人をよけながら前へ進み、二人で補助席に腰を下ろします。
女の子は座った途端に静かになりました。足をぶらぶらさせながら、窓の外を見はじめます。
張りつめていた車内の空気が、目に見えてゆるみました。
近くの人が小さくうなずいて、身を引いていた人が姿勢を戻します。
騒いでいたのは、本当にただ疲れていたからだったのだと、そのとき気がつきました。
園から歩いてきて、混み合った車内で立たされて、あの子はもう限界だったのでしょう。
「発車します。おつかまりください」
運転手はいつもの調子でそう告げて、バスをゆっくり出しました。何ごともなかったような運びでした。
二つ先の停留所で、親子は降りていきました。
「ありがとうございました」
お母さんは運転席のほうへ小さく頭を下げ、女の子の手をしっかり握って降りていきます。
乗ってきたときとは、まるで別の親子のようでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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