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「私のことが信用できないってことか」本人確認をお願いした途端に態度が変わった客。だが、店員の毅然とした対応で態度が一変

1時間続いた機種選び
携帯電話の販売店で、カウンターの接客をしています。
平日の午後に来店された五十代くらいの男性は、展示台の前で長く迷っていました。
「文字が大きく見えるのは、どれになりますか」
「こちらでしたら、後からでも表示を大きくできます」
「孫と写真を撮るなら、こっちのほうがいいのかな」
お孫さんの話、旅行の話、前の機種を8年使ったという話。気づけば1時間近く、笑い声の絶えないやり取りが続いていました。
(こういう方に会えるから、この仕事は続けられる)
機種が決まり、私は男性を手続きの席へご案内しました。
財布の上で止まった手
「それではお手続きに入らせていただきます。ご本人様の確認のため、身分証明書をお預かりできますでしょうか」
男性の手が、財布の上で止まりました。
「本当に必要なのか?」
声の高さが、さっきまでとまるで違いました。
「私のことが信用できないってことか」
「いえ、そういうことでは…」
「これだけ話しておいて、疑うのか」
隣のカウンターのお客様が、こちらを振り向きます。指先が冷たくなるのが分かりました。
どなたさまにも、同じお願い
確認をしないまま先に進むことはできません。膝の上で手を組み直して、まっすぐ男性のほうを向きました。
「ご契約のお手続きでは、どなたさまにも必ず確認をお願いしております。私が決めていることではなく、店として決まっている手順です」
「決まり…」
「はい。今日この後にいらっしゃるお客様にも、同じことをお願いいたします」
男性の口が、開いたまま止まりました。言いかけた言葉を、そのまま飲み込みます。
指がカウンターを二度叩き、それから動かなくなりました。
「ああ……そうか。そういうものか」
視線が、私の手元からゆっくり下へ落ちていきます。財布を開ける音がして、身分証明書がカウンターに置かれました。
「悪かったね。最近、変な電話ばかりかかってきてね」
「お預かりいたします。すぐにお返しいたしますね」
手続きは、そこから滞りなく進みました。設定の説明をするころには、また孫の写真の話に戻っています。
帰り際、男性は出口の手前でこちらを振り返りました。
「怒鳴って、みっともなかったな」
頭を下げたその顔は、来店されたときよりも少しだけ気まずそうでした。
自動ドアの外で、男性は新しい端末を袋から出して、画面を明るいほうへ向けています。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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