Share
「揚げたてのポテト、ありますか」指を立てるだけで注文が通るようになった常連客。同僚から見た時の不思議な光景とは

「揚げたてのポテト、ありますか」指を立てるだけで注文が通るようになった常連客。同僚から見た時の不思議な光景とは
朝7時の揚げ物ケース
学生のころ、通学路の途中にあるコンビニで朝のシフトに入っていました。週に4日か5日、7時から10時までレジに立ちます。
その時間に必ず来る男性のお客様がいました。
買うものはいつも決まっていて、揚げ物のケースを覗いてからこう言います。
「揚げたてのポテト、ありますか」
並んでいるものではなく、揚がったばかりのものが欲しいという意味です。
数はポテト2個の日と3個の日があって、その日の気分で変わるようでした。
「5分ほどお時間をいただきます」
「待ちます」
この短いやりとりを、たぶん三か月は繰り返したと思います。
指が2本立った朝
梅雨に入ったころの朝でした。自動ドアが開いて、その人が傘をたたみながら入ってきます。
いつもの言葉はありませんでした。代わりに、こちらを見て指を2本立てます。
「ポテト2個ですね。揚げたてを準備します」
男性は小さくうなずいて、雑誌の棚のほうへ歩いていきました。私はフライヤーにポテトを落として、タイマーを押します。
それから先は、言葉がほとんど要らなくなりました。
指が3本なら3個、2本なら2個。
出来上がったら私が声をかけに行き、その人がレジへ戻ってくる。流れはそれだけです。
「お待たせしました」
「ありがとう」
会話らしい会話は、この二言しかありませんでした。
他の人に見えていたもの
ところが、後から入った同僚には、まったく違う光景が見えていたようです。
「さっきの人、何も言わずに出ていきましたけど」
「指で2って出していたので、ポテトを2個です」
「……全然、分からなかったです」
言われて初めて気づきました。あの合図は、私にだけ注文として届いていたのだと。
事情を知らない人の目には、入ってくるなり店員へピースサインを向ける男性にしか映っていなかったはずです。
挨拶なのか、ふざけているのか、判断のしようがありません。
(毎朝ピースして入ってくるお客さん)
そう思うと、レジの内側で少し笑ってしまいました。
シフトを終える最後の日も、その人はいつもどおり指を2本立てました。
「今日で最後なんです。ありがとうございました」
「そうか。…揚げたて、うまかったよ」
三か月分の言葉を、まとめて聞いた気がしました。
今も揚げ物のケースの前を通るたびに、あの2本の指を思い出します。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


