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「もっと前に詰めてよ」背中に何度もカゴを押し当てる客。何度もぶつけられた私の本音

夜のドラッグストアのレジ
仕事帰りに、駅前のドラッグストアへ寄りました。
買うのは洗剤と入浴剤だけです。九時を回っていて、店内は静かでした。
開いているレジは一つきりで、前には二人が並んでいます。かごを両手で提げて、最後尾につきました。
少しして、後ろに人が並んだ気配がしました。
背中に、かごの角が当たりました。硬いふちが、上着ごしに肩甲骨のあたりへ押しつけられます。
混んでいるわけではありません。私の後ろには、通路がそのまま伸びていました。
半歩だけ前に出ると、すぐに同じ場所へまた当たります。
「もっと前に詰めてよ」
低くて、平らな声でした。怒鳴ってはいません。
振り返ると、女性が一人立っていました。
目は合いませんでした。私のほうを見ないまま、まっすぐ前を向いています。
前の人は、まだ台の上で袋を広げている途中でした。
詰めようにも、一歩も進める場所がありません。
当たり続けたかごのふち
押しつける強さは、毎回同じです。力任せではありません。だからこそ、意味が分かりませんでした。
かごを持ち替えるふりをして、体を斜めにしてみます。当たる場所が、腰のほうへ移っただけでした。
何か言おうとして、口を閉じました。
前に詰めろと言われても、前には人がいます。そう伝えれば済むはずでした。
けれど、その女性はこちらを一度も見ていません。
話しかける相手の顔が、どこにも無いような感じでした。
次に、右隣に人の気配が来ました。
女性が、真後ろから私の右へ回り込んでいたのです。肩と肩が触れる近さでした。列は、一本しかありません。
横に並んだところで、順番が早くなるわけではないのです。
私はその場から動きませんでした。列を外れれば、また後ろに立たれる気がしたからです。
振り返らずに出た自動ドア
前の人の会計が終わり、ようやく私の番になりました。
かごを台に置くあいだも、右の肩は触れたままです。
「袋はご入用ですか」
「……お願いします」
支払いを済ませて、袋を受け取ります。
私は振り返りませんでした。まっすぐレジを離れて、自動ドアへ歩きます。
背中の側で、女性が店員に何か話しかけていました。
聞き取れる大きさではありません。低くて、途切れがちな声でした。
店員が「はい」と何度か返しているのだけが分かります。
何を言っていたのかは、今も分かりません。
夜の空気に出て、そこでやっと肩の力が抜けました。
あれから、同じ店に寄ることはあります。
ただ、あの時間のあのレジに並ぶと、後ろに誰が立っているのかが気になります。
振り返らないまま、背中で気配を数えている自分に気づくのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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