Share
「良かったら子どもを貸しましょうか?」笑顔で言い放つ隣人。気味が悪い申し出に対して、夫と決めた約束とは

「良かったら子どもを貸しましょうか?」笑顔で言い放つ隣人。気味が悪い申し出に対して、夫と決めた約束とは
感じのいいお隣さんの、ある声
引っ越してきた挨拶のとき、お隣のママさんはとても感じのいい人だった。
「分からないことがあったら、いつでも聞いてくださいね」
柔らかい笑顔で、夫もすっかり安心していた。だから、最初にあの声を聞いたときは耳を疑った。壁の向こうから、別人のような怒鳴り声が響いてきたのだ。
「ふざけんな!」
子どもを叱る声だった。あまりの言葉の強さに、私たち夫婦は顔を見合わせた。
「……今の、お隣だよね」
「ちょっと怖いね」
あんなに穏やかな人が、と思った。
でも、人には誰しも余裕のない日がある。きっとそういうこともあるよね、とそのときは無理やり自分を納得させた。
玄関先での、おかしな申し出
本当にゾッとしたのは、その数日後のことだ。
ゴミ出しで一緒になったとき、その人はいつもの笑顔でこう切り出してきた。
「おたく、お子さんいらっしゃらないんですよね」
「ええ、まあ」
世間話のつもりで、私は曖昧に頷いた。
すると相手は、まるで便利な提案でもするような軽い口ぶりで続けた。
「良かったら子どもを貸しましょうか?」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。冗談だと思って笑い返そうとした私に、その人はさらに重ねてきた。
「子どもを連れてお出かけに行っても良いですよ」
笑顔は、最初に挨拶したときとまったく同じだった。
でも言っている中身が、どこかずれている。自分の子どもを、知り合って間もない隣人に「貸す」と言う。
「……お気持ちだけ、ありがとうございます」
それだけ返すのが精一杯だった。
夫婦で決めたこと
その夜、帰宅した夫にその話をすると、彼も箸を止めた。
「貸すって、どういう意味で言ってるんだろう」
「分からない。でも、笑いながら言うんだよ」
怒鳴り声の件と、あの申し出。ひとつひとつは、聞き流せたかもしれない。
でも全部つなげると、背筋がすうっと冷えていく。
「うちに子どもがいないのを知ってて、わざわざ貸すって言うんだよ」
「……たしかに、普通の感覚じゃないな」
夫もそう言って、湯のみに伸ばした手を止めた。あんなに感じのいい笑顔の裏で、その人が何を考えているのか、私たちには最後まで読み取れなかった。
「とりあえず、深く関わるのはやめておこう」
夫の言葉に、私は黙って頷いた。あれから私たちは、その人と必要以上の話をしないようにしている。
それでも玄関のインターホンが鳴るたび、私はつい身構えてしまう。あの笑顔で、また何か申し出てくるんじゃないか。そんな考えが、頭の隅から離れてくれないのだ。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


