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「荷物をどけてもらえますか」一人分の席を荷物で使い続けた乗客。だが、私が本音を伝えた結果

空いたはずの一席に、視線が集まっていた
その日の電車は、駅に停まるたびに少しずつ混み始めていた。私はつり革につかまりながら、目の前の座席を何となく見ていた。
そこには一人の乗客が座り、その隣の席には大きな荷物が置かれていた。
持ち主は端末の画面に目を落としたまま、周囲を見る様子はない。
最初は空いていたから置いたのかもしれない。ただ、今は立っている人も増えている。
それでも荷物は、一人分の座席を使ったままだった。
近くに立つ人が、ときどきその席へ目を向けているのが分かった。
私も気になっていたが、わざと席をふさいでいるのか、それとも混んできたことに気づいていないだけなのかは分からない。
「荷物をどけてもらえますか」と言えば済むことなのだろう。それでも、知らない相手に声をかけるのは意外と勇気がいる。そう思っているうちに、電車は次の駅に着いた。
乗ってきた人が、静かに声をかけた
扉が開き、また何人かが乗り込んできた。そのうちの一人が、荷物の置かれた席の前で足を止めた。
そして持ち主に向かって、穏やかな声で言った。
「電車も混んできたので、座らせてください」
責めるような言い方ではなかった。ただ、席を使いたいということをそのまま伝えただけだった。
「あ」
端末を見ていた人が顔を上げた。周囲に立っている人たちへ目を向けると、少し驚いたような表情になった。
「すみません、気づかなくて」
そう言って荷物を持ち上げ、膝の上に抱え直した。
「ありがとうございます」
声をかけた人は軽く会釈をして、空いた席に腰を下ろした。
強く言わなくても、伝わることがある
それだけのやり取りだった。
言い争いになることもなければ、相手が不機嫌になることもなかった。荷物を置いていた人も、本当に周囲の状況に気づいていなかっただけなのかもしれない。
私は結局、最後まで何も言えなかった。それでも、目の前のやり取りを見て、必要なことはもっと普通に伝えてもいいのだと思った。
注意しようとすると、つい相手を責める言葉を考えてしまう。でもこのときは、「座りたい」という事情を静かに伝えただけで状況が変わった。
次の駅で私が電車を降りるころには、車内はまたいつもの雰囲気に戻っていた。ほんの一言で、あれほど気になっていた一席のことも、誰も意識しなくなっていた。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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