MENU

Share

HOME LIFESTYLE STORY COLUMN

「乗車券を確認させていただけますか」寝たふりで避けた男性。だが、車掌が何度も確認した結果

乗車券を確認させていただけますか寝たふりで避けた男性だが車掌が何度も確認した結果

イヤホンをつけて眠る男性

出張を終え、東京駅から新幹線の自由席に乗ったときのことです。

車内は混み合っていましたが、運よく窓側の席に座ることができました。通路を挟んだ斜め前には、四十代くらいの男性が一人で座っていました。

男性は両耳にイヤホンをつけ、腕を組んで目を閉じています。深く眠っているように見えたため、私は特に気に留めず、買ってきた弁当を広げました。

しばらくすると、車掌が自由席車両を回りながら、乗客の乗車券を確認し始めました。

前の列から順番に声をかけ、切符やスマートフォンの画面を確認しています。やがて、車掌は眠っている男性の横で足を止めました。

「お休みのところ失礼いたします。乗車券を確認させていただけますか」

しかし、男性は目を閉じたまま動きません。

車掌は少し声を大きくして、もう一度呼びかけました。

「お客様、乗車券を拝見してもよろしいでしょうか」

それでも反応はありませんでした。

イヤホンで声が聞こえていないのかもしれません。車掌は男性の視界に入る位置へ少し移動し、手で合図をしながら再び声をかけました。

ところが、男性は眉ひとつ動かしません。

車掌は無理に体へ触れることはせず、近くの乗客の確認を先に進めることにしたようです。

「また後ほど伺います」

そう告げて、静かに通路を歩いていきました。

車掌が離れた直後に開いた目

車掌が隣の車両へ移った直後でした。

それまで眠っていたはずの男性が、片方の目をわずかに開けたのです。

顔を動かさないまま通路の先を確認し、車掌がいなくなったことが分かると、男性は再び目を閉じました。

偶然こちらを見ていた私は、その様子にはっきり気づきました。

本当に眠っていたのではなく、乗車券の確認を避けるために寝たふりをしていたようです。

理由は分かりません。切符をすぐに取り出すのが面倒だったのか、それとも何か確認されたくない事情があったのかもしれません。

ただ、車掌が戻ってくれば、寝たふりだけでやり過ごすのは難しいだろうと思いました。

数分後、乗車券の確認を終えた車掌が戻ってきました。

車掌は男性の隣に立つと、先ほどと変わらない落ち着いた声で呼びかけます。

「お客様、先ほどからお声がけしています。乗車券の確認にご協力をお願いいたします」

男性はまだ目を閉じています。

しかし車掌は声を荒らげることも、周囲の乗客に聞こえるよう責め立てることもありませんでした。

「確認が済みましたら、すぐに失礼いたします」

そう静かに付け加え、その場で返事を待ちました。

しばらくすると、男性は観念したように小さく息を吐きました。片方のイヤホンを外し、ゆっくりと目を開けます。

「……切符ですか」

「はい。恐れ入りますが、お願いいたします」

男性は上着の内ポケットから財布を取り出し、中に入っていた乗車券を車掌へ差し出しました。

車掌は内容を確認すると、いつもどおりの穏やかな口調で答えました。

「ありがとうございます。確認できました」

男性を問い詰めることも、寝たふりを指摘することもありません。そのまま軽く一礼し、次の車両へ向かっていきました。

男性は気まずそうにイヤホンをつけ直しましたが、今度は目を閉じず、しばらく窓の外を眺めていました。

相手の態度につられて感情的になるのではなく、必要な確認を淡々と行う。あの車掌の静かで毅然とした対応が、今でも心に残っています。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

ほかの小説も読む

CHARACTERS

登場人物から探す

THEME

テーマ・シチュエーションから探す

ENDING

結末から探す

最も人気の短編小説

もっと見る >

スカッとする短編小説

もっと見る >

モヤモヤ短編小説

もっと見る >

ゾッとする短編小説

もっと見る >

LINEの短編小説

もっと見る >

実体験をもとにした短編小説

もっと見る >

恋愛トラブル

もっと見る >

ハラスメント

もっと見る >

金銭トラブル

もっと見る >

浮気・不倫

もっと見る >

仕事のトラブル

もっと見る >
ふと心に引っかかった「モヤモヤ」
思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」

その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

応募フォームはこちら

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

特集記事

Ranking