MENU

Share

HOME LIFESTYLE STORY COLUMN

「この前、バスで見かけましたよ」話したこともない同僚。だが、私の予定まで知っていた薄気味悪い日々

「この前、バスで見かけましたよ」話したこともない同僚。だが、私の予定まで知っていた薄気味悪い日々

「バスで見かけましたよ」

その頃勤めていた会社に、ほとんど話したことのない同僚がいました。同じ部署ではありましたが、席は離れていて、挨拶をするかどうかという程度の相手です。

ある朝、廊下ですれ違ったとき、その人が突然足を止めました。

「あ、この前バスで見かけましたよ」

「え……私をですか?」

思わず聞き返すと、その人は何でもないことのように笑いました。

「そうそう。朝のバス。窓側に座ってましたよね」

私は少し戸惑いました。その人と同じバスに乗った記憶がなかったからです。

とはいえ、通勤時間が近ければ、たまたま乗り合わせることくらいあるでしょう。

「全然気づきませんでした」

そう返して、そのときは深く考えませんでした。

「今度、あそこに行くんですよね?」

ところが、それから似たようなことが何度も続きました。

休憩室で顔を合わせると、急に話しかけられるのです。

「甘いもの、好きなんですよね?」

「え? ああ……まあ、好きですけど」

別の日には、もっと驚くことを言われました。

「今度のお休み、あそこに行くんですよね?」

私は思わず相手の顔を見ました。

「……それ、なんで知ってるんですか?」

「この前、話してたじゃないですか」

相手は少し笑いながら答えましたが、私はその人にそんな予定を話した覚えはありません。

しばらく考えて、ようやく思い当たりました。数日前、別の同僚と休憩室の端でその話をしていたのです。

おそらく近くにいて、聞こえていたのでしょう。

そう考えれば説明はつきます。それでも、自分が直接話していないことを当然のように知っている相手に、少しずつ落ち着かないものを感じるようになりました。

悪気がないからこそ、言いづらかった

その後も、その人は私が誰かと話していた内容をよく覚えていました。

「この前言ってたお店、もう行きました?」

「まだですけど……よく覚えてますね」

私が少し困ったように笑うと、相手はむしろ嬉しそうでした。

「なんか、覚えちゃうんですよね」

会話のきっかけにしたかっただけなのかもしれません。相手に悪意があったのかどうかは、今でも分かりません。

だからこそ、「やめてください」と強く言うほどでもない気がして、余計に困りました。

ある日また、「最近よく会いますね」と声をかけられたとき、私は笑いながらも少し距離を取って答えました。

「そうですね。でも私、ぼーっとしてるから全然気づかなくて」

それ以上、会話を広げることはしませんでした。

その後、私は部署を異動し、その人と顔を合わせる機会も自然となくなりました。

何か大きな被害があったわけではありません。それでも、自分が話しかけてもいない相手から、何気ない行動や予定を次々と言い当てられる感覚は、今思い出しても少しぞっとします。

あの人にとっては、ただ「よく覚えているだけ」だったのかもしれません。

けれど私は今でも、ときどき思うのです。

あの人は、いったいどこまで私のことを見ていたのでしょうか。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

ほかの小説も読む

CHARACTERS

登場人物から探す

THEME

テーマ・シチュエーションから探す

ENDING

結末から探す

最も人気の短編小説

もっと見る >

スカッとする短編小説

もっと見る >

モヤモヤ短編小説

もっと見る >

ゾッとする短編小説

もっと見る >

LINEの短編小説

もっと見る >

実体験をもとにした短編小説

もっと見る >

恋愛トラブル

もっと見る >

ハラスメント

もっと見る >

金銭トラブル

もっと見る >

浮気・不倫

もっと見る >

仕事のトラブル

もっと見る >
ふと心に引っかかった「モヤモヤ」
思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」

その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

応募フォームはこちら

PROFILE

GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

website
前の記事

「若いんだから、そのくらいやってよ」準備を押しつける男性。だが、私が初めて返した一言

GLAM Lifestyle Editorialのすべての記事を見る

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

特集記事

Ranking