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「どんなコネ使ったの」必死に勉強して掴んだ就職。だが、祖母の第一声が踏みつけた瞬間

「どんなコネ使ったの」必死に勉強して掴んだ就職。だが、祖母の第一声が踏みつけた瞬間
求人票を一枚だけ選んだ夏
地元の高校を出たら、この町で働く。
進路希望の紙にそう書いたのは、誰かに言われたからではありません。
「本当にそれでええんか」
「うん。ここで働きたいから」
父はそれ以上は聞かずに、進路指導室の面談の日だけ手帳に書きこみました。並んでいる求人票は多くありません。
その中の一社に絞って、放課後は毎日、筆記の過去問と面接の受け答えを繰り返しました。
担任には滑り止めも受けておけと言われましたが、志望はその一社だけで通しました。
内定の封筒を持って帰った日、母は台所で泣いていました。
「よう頑張ったねえ」
初任給は18万円。
求人票のその数字を、私は何度も指でなぞりました。父は親戚に一軒ずつ、うちの子が決まったと電話をかけていきます。
受話器を取った瞬間
家の電話が鳴ったのは、その二日あとの夕方でした。
「もしもし」
返ってきたのは、父方の祖母の声です。
「どんなコネ使ったの」
おめでとうも、お疲れさまもありませんでした。何と答えればいいのか分からず、私は受話器を握ったまま立っています。
「大学も行かんと、就職なんてねえ」
「……はい」
「まあ、あんたが決めたんならええけど。じゃ、たまには遊びに来なさいね」
言いたいことを言い終えると、通話は切れました。あとに残ったのは、耳に押し当てたままの短い電子音だけです。
父が黙ってかけ直した
受話器を戻した私を見て、父が新聞を畳みました。
「ばあちゃんか」
「うん」
父は何も聞かずに立ち上がり、廊下の電話の前に座ります。番号を押す音が続いて、それから低い声がしました。
「母さん、俺や」
怒鳴りはしません。いつもの、少し眠たそうな声のままです。
「あの子は一年かけて自分で勉強して、あの会社に受かった。コネなんぞ一つも使うてない」
向こうの返事は聞こえません。
父はしばらく間を置いて、それだけ言い足しました。
「次に電話くれるときは、おめでとうから頼むわ」
受話器を置いて戻ってきた父は、卓袱台の湯呑みを持ち上げました。
「初給料出たら、うまいもん食いに行こか」
「……うん」
次に祖母から電話があったのは、その週の日曜です。私が出ると、受話器の向こうが一度だけ黙りました。それから聞こえた第一声は、前とは違っていました。
「おめでとう。体だけは壊さんようにね」
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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