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「家に置いてきちゃったみたい」バスに乗ってから財布がないことに気づいた乗客。だが、運転手が返した一言で空気が一変

「家に置いてきちゃったみたい」バスに乗ってから財布がないことに気づいた乗客。だが、運転手が返した一言で空気が一変

運賃箱の前で、おばあさんの手が止まった

大学院生だった頃、私は毎朝、研究室へ向かうために同じ路線バスに乗っていました。

窓際の席で資料を眺めながら揺られている時間が、当時の私の日課でした。

ある朝、バスが停留所に着いて扉が開くと、前のほうに座っていた小柄なおばあさんが席を立ちました。

ところが、運賃箱の前まで来たところで、急に動きが止まります。

バッグを開き、中をのぞき込み、別のポケットにも手を入れる。

最初は小銭を探しているのかと思いましたが、そのうち表情が少しずつ曇っていきました。

後ろには降りる人が並び始めています。私も気になって見ていると、おばあさんはバッグを抱えたまま、困ったように運転手さんを見ました。

「あら……困ったわ。どうしましょう」

それから少し照れたように笑って、こう続けたのです。

「ごめんなさいね。バスに乗ってから、お財布がないのに気づいて。家に置いてきちゃったみたい」

慌てて取り繕うでもなく、申し訳なさそうに眉を下げながら話す様子が、妙に印象に残りました。

「今日は大丈夫ですよ」と返した運転手さん

運転手さんは一瞬驚いたようでしたが、すぐに穏やかな声で答えました。

「そうでしたか。では今日は大丈夫ですよ。次に乗るとき、乗務員に声をかけてください」

おばあさんは目を丸くしました。

「いいんですか?本当にごめんなさい。ちゃんと次に持ってきますから」

「はい。足元に気をつけて降りてくださいね」

「ありがとう。本当に助かりました」

何度も頭を下げるおばあさんに、運転手さんは「大丈夫ですよ」ともう一度笑いました。

後ろに並んでいた人たちも急かす様子はなく、それまで少し張っていた車内の空気が、ふっとやわらいだように感じました。

数日後、もう一度見かけた姿

それから数日後。同じ時間のバスに乗っていると、見覚えのあるおばあさんが乗ってきました。

乗車すると、すぐに運転席のそばで運転手さんに声をかけています。

「あの、この前お財布を忘れてしまったんです。今日、そのときの分も払いたくて」

運転手さんが話を聞き、支払い方を案内すると、おばあさんはほっとした顔で運賃を支払っていました。

「ああ、よかった。ずっと気になってたの。これで安心しました」

その声が聞こえてきて、私まで少しうれしくなりました。

財布を忘れたことを責めずに対応した運転手さんと、それを忘れずにきちんと支払いに来たおばあさん。

ほんの数分の出来事でしたが、研究室へ向かうその日の朝は、いつもより少しだけ気分が明るかったのを覚えています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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