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「香典は全部、こちらで預かるから」生前は実家に寄りつかなかった兄。葬儀当日、兄嫁の行動に思わず絶句

「香典は全部、こちらで預かるから」生前は実家に寄りつかなかった兄。葬儀当日、兄嫁の行動に思わず絶句

生前は寄りつかなかった兄が、喪主の席にいた

父が亡くなったと知らせたとき、電話の向こうの兄の声は驚くほど落ち着いていた。

ここ数年、兄が実家の敷居をまたいだ記憶がない。

父の通院に付き添うのも、弱っていく父の様子を母と一緒に見守るのも、ずっと私の役目だった。

「日取りも段取りも、こっちで決めるから」

そう言われて、私は受話器を持ったまま、しばらく声が出なかった。

通夜の日、兄は誰よりも早く式場に来ていた。

そして案内されるより先に、迷いなく祭壇の正面へ腰を下ろした。喪主の席だった。

「喪主は俺がやる。お前は受付にいてくれ」

母は黙ってうなずいた。この期に及んで揉めたくはなかったから、私も何も言わなかった。

通夜と葬儀を合わせて、会葬者は100人を超えた。

父を知る方が次々に訪れ、母の知人も、私の友人も、遠方から駆けつけてくれた。

受付の列は最後まで途切れず、私はひたすら頭を下げ続けた。

「お父様には、本当にお世話になりました」

手を握ってそう言ってくださる方の名前を、私は一人ずつ心に刻んだ。

中には二十万円ほどを包んでくださった方もいて、封筒の厚みに指先が震えた。

この方たちに、落ち着いたら必ずお礼を差し上げよう。そのときの私は、それだけを考えていた。

「預かる」と言われたきり、何も返ってこない

葬儀が終わり、受付に積み上がった香典袋を整理しようとしたときだった。

兄嫁が、箱ごとすっと抱え上げた。

「香典は全部、こちらで預かるから」

え、と声が出た。

兄夫婦はその箱を車に積み、そのまま帰っていった。

喪主がまとめるものだと言われれば、そういうものかとも思う。

ただ、誰がいくら包んでくださったのかが分からなければ、お礼の出しようがない。数日待って、私は電話をかけた。

「お礼状を出したいの。お名前と金額だけでも教えてほしい」

「そのへんはこっちでやるから、気にしなくていいよ」

何度頼んでも、名簿の写しは一度も回ってこなかった。

母に相談すると、疲れた声で言われた。

「もう、いいじゃないの」

母の知人にも、私の友人にも、私は結局、当たり障りのない文面の礼状を出すしかなかった。

あの方にどれだけのご厚意をいただいたのか、私は今も知らない。

それからしばらくして、親戚の集まりで、兄嫁が真新しい高級なバッグを提げているのを見かけた。

誰も何も言わなかったし、私も何も聞けなかった。

父の介護に、兄は一円も出さなかった。それなのにあの日だけ、なぜあんなに迷いなく、いちばん前に座れたのだろう。今も、分からないままでいる。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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