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「ベランダで話す声が、寝室まで届く」直接は言えなかった私。だが、管理会社に頼んで届けてもらった一言

「ベランダで話す声が、寝室まで届く」直接は言えなかった私。だが、管理会社に頼んで届けてもらった一言
窓を閉めても届く声
越してきて半年ほどの梅雨明けの晩、窓を閉めていても、隣の話し声ははっきり届いてきました。
時計は23時を回っています。壁越しではなく、仕切り板を一枚はさんだ向こうのベランダで、誰かが電話をしていました。
「だからさ、それ先週も言ったじゃん」
怒鳴っているわけでも、酔っているわけでもありません。笑い声も混じっています。外で人と向かい合って話すときの、そのままの大きさでした。
たまたまなら、それで終わりました。次の週も、そのまた次の週も、同じ時刻に同じ声が届きます。
ドアの前で引き返した
早朝にも音がありました。5時前、ゴミ袋を引きずる音と、硬いものがぶつかる音が続けて二度です。
「今の、下の階かな」
妻はもう目を開けています。息子も起き出してきました。
廊下で会えば挨拶をする相手でした。会釈をすれば必ず返してくれますし、宅配の荷物を預かってもらったこともあります。悪気でやっている人ではありません。
だから、よけいに言いにくいのです。隣のドアの前まで行き、インターホンに指をのばして、そのまま部屋へ戻りました。
「言ったら、明日から目を合わせられなくなるよ」
妻の言うとおりでした。言えば角が立ちますし、言わなければこの先もずっと続きます。どちらを選んでも、こちらが黙る形になりそうでした。
名前を伏せて届いた言葉
管理会社に電話をしたのは、その週の土曜です。担当の方は、口をはさまずに聞いてくれました。
「ベランダで話す声が、寝室まで届く」
伝えたのはそれだけです。何時から何回鳴ったという記録は取っていませんし、取る気にもなれませんでした。責めたいわけではないのです。
「うちの名前は、出さないでもらえますか」
「全戸にお配りする形にします。どのお宅からとは分かりません」
数日後、掲示板に生活音についてのお知らせが貼られました。同じ紙が各戸のポストにも入っています。
声が止んだのは、次の日からです。早朝の音も、短いものに変わりました。
何日かして、ゴミ置き場で顔を合わせました。向こうが先に会釈をして、私も頭を下げます。探るような目は、どこにもありませんでした。
妻にその話をすると、洗濯物をたたむ手を止めずに笑いました。
「言わなくて、よかったね」
あの晩、インターホンの前で引き返した自分を、いまはそれほど悪く思っていません。窓を開けたまま眠れる夜が、戻ってきました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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