Share
「使いたいなら、貸してだよ」黙って息子のおもちゃを持って行った子供。だが、親の一言に思わず絶句

「使いたいなら、貸してだよ」黙って息子のおもちゃを持って行った子供。だが、親の一言に思わず絶句
砂場に伸びてきた手
土曜の午前でした。
近所の公園の砂場で、息子と砂遊び用の型抜きを並べていました。
星や魚の形が抜ける、手のひらに乗る小さな道具です。
同じくらいの年に見える子が、いつのまにか隣にしゃがんでいました。息子の手元をじっと見ています。そのうちに、砂の上に置いてあった星の型へ、すっと手が伸びました。
まだ言葉が出ない年頃なのかもしれません。なるべくやわらかい声で話しかけました。
「一緒に遊びたいのかな」
返事はありません。
目も合いませんでした。息子は取られたことに気づかないまま、別の型に砂を詰めています。
「使いたいなら、貸してだよ」
それでも同じでした。
その子は星の型を握って、砂をすくっては落としています。そろそろ返してもらおうか。迷っているあいだに、その子は立ち上がって走り出しました。
木陰のベンチまで
このまま持っていかれては困ります。砂を払う間もなく、私も慌てて追いかけました。
小さい子がたくさん遊んでいる公園です。走った先に、木陰の長いベンチがありました。
その子はベンチに座った女性の膝に、星の型を掲げて見せていました。
女性は缶を片手に持ったまま、こちらへ顔を向けます。私に気づいたようでした。
「すいません、子供がもらっちゃいましたー」
語尾がのんびりと伸びました。その人は座ったままです。
砂場からベンチまでは、大人の足でも十数歩あります。
砂を払って持ち帰った
言うか、黙って引き返すか。
砂場に残してきた息子の顔が浮かんで、私は口を開きました。
「それでも勝手に取られては困ります!」
缶を持つ手が止まりました。何か言いかけて、その人は途中で飲み込みます。
「返してもらいに来ました」
子どもの手から、星の型をそっと引き取りました。女性は小さく息を吐いて、目を逸らします。
案の定、その子は大きな声で泣き出しました。悪いのはこの子ではありません。
目の前にあったものへ手を伸ばした、それだけです。
(ごめんね)
気まずさを抱えたまま、砂場へ戻りました。泣き声はしばらく続いています。
少し歩いてから振り返ると、女性は缶を足元に置いて、泣いている子のほうへ手を伸ばしていました。
息子は何も知らないまま、砂の山に星を押しつけています。私はその横にしゃがんで、崩れた縁をもう一度固めました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


