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「食器棚の中身は使いやすいようにしていいわ」同居している祖母の一言。翌朝、食器棚を見た母が驚いたワケ

「食器棚の中身は使いやすいようにしていいわ」同居している祖母の一言。翌朝、食器棚を見た母が驚いたワケ
許可が出た夕方
実家では、母と、母の義母である祖母が同居していた。
台所を回しているのは母だ。それなのに食器棚の中身だけは、祖母が嫁いできた頃のまま動いていなかった。
その夕方、母は思い切って切り出した。
「毎日使う汁椀が、一番上の段なんです。置き換えても、いいですか」
祖母は、テレビから目を離さずに答えた。
「いいですよ」
「本当に、いいんですか」
「食器棚の中身は使いやすいようにしていいわ」
母の顔が、ぱっと明るくなった。
私はその日、たまたま夕飯を食べに寄っていた。麦茶を飲みながら、母が棚の戸を開けるのを眺める。
茶碗が触れ合う、かちりという音が続いた。
奥から出てきた来客用の湯呑みは、手のひらにずしりと重い。三十年、誰も使っていないものだった。
毎日使う汁椀を手前へ。重い鉢は下の段へ。
母は一時間かけて、全部を入れ替えた。
機嫌よく戸を閉めて、その夜は早くに眠った。
元通りだった食器棚
翌朝、鍋を借りに寄ると、母が食器棚の前で立ち尽くしていた。
朝の光が、開いた戸の中まで届いている。
汁椀は、また一番上。
重い鉢が手前で、湯呑みは奥。
ゆうべ入れ替えたものが、一つ残らず元通りになっていた。
祖母は居間で新聞を広げ、お茶を飲んでいた。食器のことは、一言も言わない。
「おはよう。今日は暑くなるらしいわね」
それきりだった。
母は黙って汁椀を取り、朝食の支度を始めた。
けれど味噌汁をよそう手が、途中で止まる。
母はお盆を置いて、居間へ行った。
「お義母さん。食器、戻されましたよね」
祖母の湯呑みが、口の手前で止まった。
「戻したのなら、そう言ってくださいね。黙ってやられると、こちらは分からないので」
穏やかな声だった。祖母は新聞を畳もうとして、途中でやめる。
何か言いかけて、飲み込む。それから、湯呑みを卓に置いた。
「…別に、意地悪でやったんじゃないのよ。元の場所が、良かっただけ」
母は背筋を伸ばして、まっすぐ祖母を見た。
「それを、聞きたかったんです」
祖母はしばらく黙っていた。それから、ぽつりと言った。
「…言わなければ、分からないものね」
祖母がそんな言葉を口にするのを、私は生まれて初めて聞いた。
「湯呑みだけは、奥に戻していい?あれ、重くてね」
「はい。汁椀は、下の段でいいですか」
「いいわ。あなたが毎日使うんだから」
二人は棚の前に並んで立ち、一段ずつ相談しながら決め直した。
私は口を挟まず、その背中を見ていた。
今も実家の棚は、あの朝の並びのままだ。何かを動かすときは、どちらからともなく「これ、ここでいい?」と声がかかる。母は言う。
「黙って引き下がらなくて、よかった」
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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