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「玄関だけでも、上げてくれない?」住所を知りたがり手を握ろうとした男。だが、毅然とした態度で断った結果

「玄関だけでも、上げてくれない?」住所を知りたがり手を握ろうとした男。だが、毅然とした態度で断った結果
ノマドという言い訳
職場でよく顔を合わせる男性が、以前から自分のことをこう話していた。
「自分、ノマド気質なんですよ」
最初は、場所にとらわれない自由な生き方をしている人なのだと思っていた。
少し興味も湧いて、仕事帰りに一度だけ食事に行くことにした。
ところが、話を聞くうちに、その正体が見えてきた。
色々と訳ありで部屋を借りられないのだという。
だから今は、ネットカフェを転々として暮らしているらしい。
「家がないって、それは大変じゃないですか?」
「いやいや、これがけっこう快適で。まさにノマド、自由そのものですよ」
悪びれる様子もなく、聞こえのいい言葉で言いつくろう。その感覚に、私は背筋がひやりとした。
手を握ろうとした男
食事を終えて駅へ向かう帰り道、男は急に距離を詰めてきた。そして、私の手をそっと握ろうと伸ばしてきたのだ。
私はとっさに、肩にかけていたストールを両手で持ち直し、さりげなくその手をかわした。
「そんなに警戒しないでくださいよ」
男は笑いながら、なおも横に張りついてくる。
「ねえ、このあと家に行ってもいい?」
「いえ、それはちょっと」
私がやんわり断っても、男は引き下がらなかった。それどころか、私の家の方角をしきりに聞き出そうとしてくる。
「玄関だけでも、上げてくれない?」
その一言で、確信した。この人に、住んでいる場所を知られてはいけない。
一度でも家を教えれば、この調子で押しかけてくるに違いない。背中に、じっとりと汗がにじんだ。
「今日はちょっと散らかっているから」
私はきっぱりとそう言って、足を止めた。笑顔は崩さないまま、けれど有無を言わせない声で。
男は一瞬、言葉に詰まった。
「あ、いや、無理にとは……」と口ごもり、決まりの悪そうな顔で目を泳がせる。さっきまでの押しの強さは、すっかり影をひそめていた。
私は「それじゃ、ここで」とだけ告げ、改札とは違う方向へ歩き出した。
家の道順を悟られないよう、わざと遠回りをして。
それからは、二人きりで会うことは二度となかった。向こうから食事に誘われても、理由をつけてやんわりと断り続けた。職場で必要な話をするだけの、それだけの間柄に戻した。
もしあの夜、押し切られていたら。住まいを知られ、上がり込まれていたかもしれない。そう思うと、今でもぞっとする。でも、はっきり断れた自分に、少しだけ胸を張れた夜だった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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