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「食費大変なんだから!」と怒鳴る妻。だが、昨日使った鍋を洗った時に気づいた違和感とは

「食費大変なんだから!」飛んできた言葉
その日の夕方、私はキッチンに立っていました。
シンクには昨晩の食器が残っていて、まずそれを片付けながら夕飯の下ごしらえをしようと考えていたのです。
冷蔵庫を開けると、野菜やら肉やらがそれなりに入っています。
使っていいかどうか一応確認しようと、リビングでテレビを見ていた妻に声をかけました。
すると、画面から目を離さないまま、妻が言いました。
「あんまり沢山食材を使わないで!食費大変なんだから!」
確かに、食費は家計の中でも気になるところです。
妻の言いたいことは分かります。節約意識を持つことは大切で、私もそこに異論はありません。
ただ、分かるのですが、私の手元には今、大きな鍋がありました。
昨晩、妻が「今日は野菜をたっぷり入れたスープを作るね」と言って仕込んだものです。
家族みんなで食べようと多めに作ったのでしょう。
鍋は大きく、具材もたっぷりと入っていました。
ところが、どういうわけかその鍋はほとんど手をつけられないまま冷蔵庫に収まっていて、私はそれを今まさにシンクへ運び、残った中身を処理しているところでした。
「あんたもな」という言葉を、飲み込んだ夜
鍋の中を見ると、昨晩の具材がそのままの形で残っています。
人参、玉ねぎ、ブロッコリー。どれも立派な食材です。
量も多い。これだけの食材を一から用意すれば、それなりにお金がかかります。
誰も食べないまま、消えていく量を前に、私はしばらく動けませんでした。
「あんたもな!」
言葉が口まで上がってきました。
けれど、その声は喉のあたりで止まったまま、外には出てきません。
夫婦間でこういうことを言い合うのは得策ではない、言っても険悪になるだけだ、そう頭のどこかが判断するのです。
妻はテレビの続きに夢中で、私がどんな顔をしているかは見ていません。
キッチンの音と、テレビの音だけが重なっています。
私は何も言わずに鍋を洗い、冷蔵庫から残りの食材をいくつか取り出して、なるべく少ない量で夕飯を作りました。
使う量を意識しながら炒めていると、先ほどの妻の言葉がまた頭をよぎります。
ダイニングに料理を並べると、妻は「ありがとう」と言いました。
その一言がかえって、胸の中のモヤモヤをくっきりと輪郭づけていきます。
怒っているわけでも、責めたいわけでもないのです。
ただ、あの時の鍋の重さが、まだ手のひらに残っている気がしてなりません。
言えなかったことは、今も心の中に残っています。
言うべきだったのか、黙っていて正解だったのか、今もまだ答えは出ていません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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