Share
「こんな声だったんだ」自分の声にコンプレックスを持っていた私。だが、お客様の何気ない一言に救われた

「こんな声だったんだ」自分の声にコンプレックスを持っていた私。だが、お客様の何気ない一言に救われた
ずっと好きになれなかった自分の声
レジの仕事にも少しずつ慣れてきた頃のことです。
「いらっしゃいませ」
毎日何度も口にする言葉なのに、私は自分の声を聞くたび、どこか気恥ずかしい気持ちになっていました。
昔から、自分の声があまり好きではなかったのです。
電話に出ると母と間違えられることがあり、人前で話したときには聞き返されることもありました。録音した自分の声を聞けば、「こんな声だったんだ…」とがっかりしてしまいます。
自分の声には特徴がない。聞き取りにくいのかもしれない。そんなふうに、いつの間にか思い込んでいました。
だから接客でも、なるべく目立たないようにしていました。
「ありがとうございました」
「レジ袋はご利用になりますか?」
マニュアル通りの言葉を、間違えず、丁寧に言えればそれでいい。そんな気持ちでレジに立っていたのです。
その日の夕方、五十代くらいの男性のお客様が私のレジに来ました。
カゴには惣菜や飲み物が入っていて、私はいつものように商品を一つずつ読み取っていきます。
「袋、お付けしますか?」
「ああ、お願いします」
「かしこまりました」
特別な会話をしたわけではありません。何百回も繰り返してきた、ごく普通の会計でした。
「お姉さん、声が綺麗だね」
会計が終わり、私がお釣りとレシートを差し出したときです。
男性が受け取りながら、ふと私の顔を見ました。
「お姉さん、声が綺麗だね」
「え?」
思わず聞き返してしまいました。
すると男性は少し笑って、もう一度言ってくれたのです。
「うん。聞いてて心地いい声だなって思って。声優さんみたいだね」
まさか自分の声を褒められるとは思っていなかったので、一瞬どう返せばいいのか分かりませんでした。
「そ、そうですか? ありがとうございます……」
自分でも驚くほど、うれしくなっていました。
男性は「じゃあ、ありがとうね」と商品を持ってレジを離れていきます。
後ろには次のお客様が待っていたので、私もすぐに仕事へ戻りました。
「お待たせしました。いらっしゃいませ」
いつもと同じ言葉のはずなのに、そのときだけは少し違って聞こえました。
嫌いだった声を、もう一度聞いてみた
その夜、家に帰ってから、私は久しぶりにスマートフォンで自分の声を録音してみました。
再生ボタンを押す前には、やっぱり少し抵抗がありました。
「…別に、そんなに変じゃないのかな」
聞こえてきた声は、もちろん昨日までと同じ自分の声です。
急に好きになれたわけではありません。それでも以前のように、「嫌だな」とすぐ止めたい気持ちにはなりませんでした。
自分ではずっと欠点だと思っていたものを、初対面の人が何気なく褒めてくれた。そのことが、思っていた以上にうれしかったのだと思います。
その後、私がレジに立っているときに、あのお客様を見かけることはありませんでした。
それでも今、自分の声が気になったときには、ときどきあの日の言葉を思い出します。
「お姉さん、声が綺麗だね」
たった一言で長年の苦手意識が消えたわけではありません。でも、あの日を境に、自分の声を以前ほど嫌わなくなりました。
何気なく口にした褒め言葉が、誰かにとっては思いがけないほど大きな励みになることもあるのだと、今でも感じています。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


