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「ベビーカー、押さえておきますね」会計に手間取る若い母親。だが、店員の対応に場の空気が和んだ瞬間

「ベビーカー、押さえておきますね」会計に手間取る若い母親。だが、店員の対応に場の空気が和んだ瞬間
混み合う朝のパン屋のレジで
朝の駅前にあるパン屋は、通勤前の客でいつも混み合っている。
焼きたての香りが漂う店内で、トレイを手にした人たちがレジに列をつくっていた。
私の前に並んでいたのは、ベビーカーを押した若いお母さんだった。
順番が来て、彼女がトレイをカウンターに置いたそのとき、ベビーカーの中の赤ちゃんがぐずり始めた。
小さな手足をばたつかせ、今にも泣き出しそうな声をあげる。お母さんは片手であやしながら、もう片方の手でバッグの中の財布を探していた。
「すみません、ちょっと待ってくださいね」
焦る指先が、なかなか小銭をつかめない。後ろに続く列を気にしてか、彼女の頬はみるみる赤くなっていった。
ぐずる声は少しずつ大きくなり、周りの視線が集まっていくのが、並んでいる私にも伝わってくる。
その空気を察したのだろう。レジに立つ店員さんが、落ち着いた声でこう言った。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
そして、ぐらりと動きかけたベビーカーに、そっと手を添えた。
「ベビーカー、押さえておきますね」
お母さんが、はっと顔を上げる。張り詰めていた表情が、少しだけほどけたように見えた。
広がっていった優しさ
「すみません、ほんまにごめんなさい」
何度も頭を下げるお母さんに、店員さんは笑顔のまま、やわらかい声で返した。
「お子さんも頑張ってますからね」
その一言に、彼女の目もとがふっとゆるんだ。不思議なもので、店員さんの穏やかさは、その場にいた私たちにも伝わっていく。
後ろに並んでいた人たちが、急かすでもなく、ベビーカーのぶんだけ自然と少し距離を空けて待ち始めた。誰も、いらだった様子を見せなかった。
ようやく支払いを終えたお母さんに、店員さんはさらに気を配った。
「袋は持ちやすいように、二重にしておきますね」
片手がふさがっていても持てるように、という心づかいだった。お母さんは、パンの袋を受け取りながら、何度も何度も頭を下げて店を出ていった。ベビーカーの中の赤ちゃんも、いつのまにか泣きやんでいる。
次は私の番だった。トレイを差し出しながら、私は思わず「ありがとうございます」と口にしていた。自分が何かしてもらったわけでもないのに、なぜだかそう言いたくなったのだ。
店員さんは少し驚いた顔をして、それからにっこりと笑った。焼きたてのパンの香りと、その笑顔に包まれて、忙しいはずの朝が、ふっとあたたかくなる。私は軽くなった気持ちのまま、いつもの一日へと歩き出した。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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