Share
「レジの合計が違う、ちゃんと確かめてよ」レジで声を荒らげた客。だが、店員が冷静な対応をした結果

レジ前で上がった声
夕方のスーパーは、仕事帰りの客でどのレジも列ができていました。
私が並んだレジの先頭で、ひとつ前の客が急に声を張り上げたのです。
「レジの合計が違う、ちゃんと確かめてよ」
五十代くらいの男性でした。
財布を片手に、レシートをレジ台に叩きつけるようにして詰め寄っています。
「こんなに買ってない。計算が合わないだろう」
後ろの列がじわじわ伸びて、周りの客がざわつき始めました。
私も、また面倒な人だろうか、と身構えてしまいました。
早く終わってほしい。そんな空気が、レジの周りに満ちていきます。
一点ずつ、声に出して
ところが、若い女性店員は顔色ひとつ変えませんでした。
「すぐ一緒に確認させてください」
「本当に合ってるのか。二度も同じことされたら、たまらないよ」
「はい。おひとつずつ、ご一緒に見ていきますね」
店員は落ち着いた声のまま、打ち込んだ履歴を画面に表示させ、買われた品をひとつずつ声に出して読み上げていったのです。
「牛乳、ひとつ。卵、ひとつ。食パン……」
指を画面に沿わせながら、ゆっくりと確かめていきます。
列に並んだ私たちも、いつの間にかその声に耳を澄ませていました。
男性も、腕を組んだまま黙って画面を見つめています。
急かすでも、ごまかすでもなく、ただ一点ずつ突き合わせていくその手つきに、詰め寄っていた男性の口調も少しずつ静かになっていきました。
「こちらの品が、二回打ち込まれています」
店員の指が止まりました。同じ商品のバーコードが、重ねてスキャンされていたのです。
合計が合わなかったのは、そのぶんでした。
差し出された返金
店員はその場でレジを開け、多く受け取っていた分を数えて男性に返しました。
「大変失礼しました。こちら、返金いたします」
張り詰めていた男性の肩から、ふっと力が抜けたのが分かりました。
あれほど強く言い張っていたのに、返された硬貨を見つめる横顔は、すっかり毒気を抜かれたようでした。
声を荒らげていた顔が、決まり悪そうにゆるみます。
「声を荒らげてすいません…」
そして店員は、頭を下げたあとに、こう続けたのです。
「気づいてくださって、ありがとうございます」
その一言で、レジの周りの空気がやわらかくほどけました。
ざわついていた列の誰もが、小さくうなずいています。男性は照れたように会釈して、袋を提げて帰っていきました。
自分の番が来た私は、なんだか少し誇らしい気持ちで、そのレジにかごを置いたのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


