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「玄関を出るたび、窓から見られている」敷地を巡り揉めた隣人。ポストに入っていた手紙に背筋が凍った

草を抜いていると、隣から声がした
庭の隅に、細い雑草が伸びていました。
隣の家とのあいだには塀もフェンスもなく、地面がそのまま続いています。境目には小さな石が置かれていましたが、草に隠れてほとんど見えなくなっていました。
石の手前に生えた草をしゃがんで抜いていると、背後で戸の開く音がしました。
「そこ、触らないでもらえますか」
振り返ると、隣の女性が窓からこちらを見ています。
「すみません。うちの庭だと思って、草を抜いていました」
「そこまで、うちの土地ですから」
女性は迷いのない口調で、私の足元を指しました。
「昔から、ここが境だと聞いています」
指された場所は、境目だと思っていた石より、こちら側に数十センチ入ったところでした。
書類を見せても話は変わらなかった
家に戻り、購入時にもらった書類を確認しました。
土地の位置関係が描かれた図面には、隣との境目に印が記されています。庭にある石の位置とも、おおよそ一致していました。
念のため夫にも見せました。
「やっぱり、あの石のところじゃないか」
翌日、図面の写しを持って隣を訪ねました。
「昨日の場所ですが、家を購入したときの書類では、この印のところが境になっています」
女性は紙を受け取り、しばらく眺めました。
「でも、祖父からは、もっとこちらまでだと聞いていました」
「庭にある石も、この印の位置にあると思うのですが」
「その石を、そちらが動かしたんじゃないですか」
思いもよらない言葉に、返事が遅れました。
「動かしていません。昨日も、その手前の草を抜いただけです」
しかし、女性は納得しませんでした。
「とにかく、勝手に触らないでください」
図面を返すと、女性は戸を閉めました。
ポストに入っていた手書きの紙
それから数日、庭に出るたびに隣の窓が気になるようになりました。
玄関を出たとき、カーテンの隙間からこちらを見ている女性と目が合ったこともあります。
郵便物を取りに出ただけなのに、窓の向こうでカーテンが動くこともありました。
「外に出るたびに、見られている気がする」
夫に話すと、困ったように庭を見ました。
「昨日のことが気になっているだけじゃないか」
私も、そうであってほしいと思っていました。
ところが木曜日の朝、ポストの中に折り畳まれた白い紙が入っていました。
開くと、太いペンで一行だけ書かれています。
「境界の印を勝手に動かすな」
石にも境界にも、手を加えた覚えはありません。
草を抜いて石が見えるようになったことで、位置を動かしたと誤解されたのでしょうか。
そう考えても、直接ポストに紙を入れられたことが怖く、指先が冷たくなりました。
「おじいさんが勝手に言っていただけ」
夫と相談し、近所の事情に詳しい自治会長さんに、話し合いへ立ち会ってもらうことにしました。
自治会長さんには、境界を決めてもらうのではなく、隣の女性と落ち着いて話すために同席をお願いしました。
当日、庭で話していると、隣の家から女性の夫も出てきました。
女性は地面を指しながら言います。
「父から、昔はここまでうちの土地だったと聞いているんです」
すると、隣の夫が首をかしげました。
「父さんが、そんなことを言っていたのか」
「ずっと前から聞いていました」
隣の夫は庭の石を見たあと、女性に言いました。
「でも、この石は俺が子どものころから同じ場所にあるよ。父さんは昔から、自分の土地を広めに言うところがあったからな」
女性は、しばらく黙っていました。
「では、石を動かしたというのも、確認したわけではないんですね」
自治会長さんが静かに尋ねると、女性は小さくうなずきました。
「草がなくなって石が見えたので、動かされたのかと思いました」
「私は草を抜いただけです。石には触っていません」
女性は足元を見たまま、短く答えました。
「……分かりました」
はっきりとした謝罪はありませんでしたが、それ以降、ポストに紙が入ることはなくなりました。
隣の窓から視線を感じることも、次第になくなっていきました。
庭の石は、今も同じ場所にあります。
ただ、玄関を出るとき、私は今でも一度だけ隣の窓を見てしまいます。あの紙に書かれていた太い文字が、完全には頭から消えていないのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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